アモキサンは三環系というカテゴリーに属する抗うつ剤です。
三環系とは、化学構造中に環状構造が3つあることから由来している名前で、抗うつ剤のカテゴリーとしては最古のものになります。
ここではこのアモキサンの効果・副作用と特徴をご紹介します。
アモキサンの概要
アモキサンは日本では1981年に発売された抗うつ剤です。
三環系のカテゴリーの中では新しい部類に入る抗うつ剤ですが、それでもかなりの歴史があります。
以下にアモキサンの基本情報をご紹介します。
抗うつ剤としてのカテゴリー
- 三環系抗うつ剤
三環系は、抗うつ剤としては最古のカテゴリーとなります。
まさに抗うつ剤はこの三環系からスタートしています。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約8時間
- 血中濃度最高点到達時間:約1.5時間
薬の効果は服用後約1.5時間で最大になり、約8時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。
ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。
効果が出るまでには2週間程度かかる
また、抗うつ剤を使い始めた場合、効果が出現するまでは2週間程度の時間がかかります。
しっかりとした効果が出るまでは月単位の時間が必要です。
そのため、抗うつ剤の使い初めには効果が出てくるまでじっくりと我慢する必要があります。
適応疾患
- うつ病・うつ状態
アモキサンの効果
抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。
抗うつ剤の5つのカテゴリー
抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。
- 三環系:効果は強いが副作用も強い
- 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
- SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
- SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
- NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある
カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。
アモキサンは三環系に属し、古いカテゴリーの抗うつ剤となります。
効果は強いものの、副作用も強いという特徴を持つことになります。
三環系の中でのアモキサンの強さ
更に三環系の中には、以下のような抗うつ剤が存在します。
三環系の抗うつ剤は更に第一世代と第二世代の2つの分けることができます。
第二世代の抗うつ剤は、効果は第一世代と同等で副作用が低減しているという特徴があります。
アモキサンは三環系の中で第二世代に属し、確かな効果を持つ一方、副作用は他の三環系の抗うつ剤よりは少ないという特徴があります。
アモキサンはノルアドレナリンに作用する
また、三環系の抗うつ剤には、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やすという効果がありますが、アモキサンに関してはノルアドレナリンを増やす効果に優れています。
そのため、主に意欲ややる気といった部分に働きかける要素の強い抗うつ剤となっています。
効果の出現は比較的早い
効果の出現速度という点でも、アモキサンには特徴があります。
一般的には抗うつ剤は効果が表れるまで使用開始から2週間程度必要と言われています。
一方で、アモキサンに関しては効果の出現が早く、1週間程度(場合によっては3,4日)で効果が表れると言われています。
この効果が早くあらわれるという特徴は、うつ病で苦しむ人にとってはかなり大きなメリットとして捉えることができます。
効果が現れるまでの期間は副作用のみが出現するため、とても苦しいのですが、この期間が比較的短くすむことになります。
アモキサンの副作用
三環系の副作用の特徴
アモキサンをはじめとした三環系抗うつ剤は、効果が強い反面、副作用も強いという難点があります。
三環系は古いタイプの抗うつ剤なので、セロトニンとノルアドレナリンのみならず様々な受容体に作用してしまうため、多くの副作用が存在します。
主な副作用としては、抗コリン作用と抗ヒスタミン作用によるもの2つに分類することができます。
抗コリン作用の代表的なものとしては、
- 口渇
- 便秘
抗ヒスタミン作用としては、
- 眠気
- 体重増加
などがあります。
また、その他にも
- 手が震える
- 尿が出にくくなる
- 立ちくらみ
といった副作用もあります。
要するに三環系の抗うつ剤には多くの副作用が存在し、またその強さの程度も個人差はありますがかなり不快なレベルまで感じることがあります。
そのため、副作用に耐えられずに脱落してしまう人も多くいます。
副作用により三環系の処方は減っている
三環系の抗うつ剤は現在主流のSSRIやSNRIに比べても強い抗うつ作用を持つ薬が多いのですが、このような副作用が多いという難点から現在では処方される頻度が減ってきています。
なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。
三環系の中でのアモキサンの副作用の特徴
アモキサンは三環系の中では第二世代に属するため、三環系の中では比較的副作用は少ないと言われています。
しかしながら、それでも上記に挙げたような副作用はかなりの頻度で発生します。
そして副作用の強さもやはり新しいSSRIなどに比べると格段に強いです。
三環系の抗うつ剤は効果は確かなのですが、副作用の強さも確かなものがあるため、使用する際には多くの副作用が現れるという前提で使う必要があります。
1990年代は抗うつ剤の主力であった
現在では抗うつ剤の主流といえば、SSRI、SNRI、NaSSAですが、これらが普及する前に主として使われていた抗うつ剤はこのアモキサンとルジオミール(四環系抗うつ剤)です。
三環系の抗うつ剤は効果は強いものの、副作用も強いためなかなか使いにくいという点がネックなのですが、このアモキサンに関しては三環系の中では相対的に副作用が少ないため、比較的よく使われていたようです。
では副作用が少ない分効果が劣るかというとそうではなく、特にノルアドレナリンに対する効果(意欲ややる気を持ち上げる効果)についてはかなり強いと定評のある抗うつ剤です。
一方で、三環系の中では副作用は低減されているものの、やはりSSRIやSNRIに比べると格段に副作用は多いため、現在では昔に比べると処方される頻度は多くないようです。
それでも、やはり抗うつ作用としては強力なものがあるため、SSRIやSNRIなどでうまくいかない場合には、依然としてアモキサンは処方されることがままあるようです。
実際のところ、「よく使われている抗うつ剤ランキング」でも、依然としてアモキサンはランクインしています。
参考記事:よく使われている抗うつ剤ランキング
アモキサンは使う時期を選ぶ
急性期には向かない
なお、アモキサンの特徴である意欲ややる気を上げるという効果ですが、これはかなり時期を選ぶ効果であると思います。
というのは、うつ病の急性期のようなとにかく休むことが必要な時期にこのアモキサンのような持ち上げる薬を使ってしまうと、せっかく溜まりかけていたエネルギーを活動により使い果たしてしまい、結局うまくいかないケースが多いのではないかと思うからです。
実際に私も急性期において、アモキサンを処方され、失敗した経験があります。
参考記事:アモキサンで意欲とやる気が上がったけど活動しすぎて失敗した話
ある程度エネルギーが溜待った後、意欲を上げるのに使う
アモキサンを使うといいのは、どちらかというと、うつ病を発症してからしっかり休み、エネルギーは溜まったものの、どうしても意欲ややる気といった部分が持ち上がってこないという場合ではないかと思います。
もしくは、働き続けながら、なんとか休まずに乗り切りたいといったような場合にも適しているかもしれません。
いずれにせよ、意欲を上げる効果に優れているため、しっかり休むべきときではなく、意欲ややる気が必要な時に効果を発揮する抗うつ剤ではないかと思います。
アモキサンの特徴まとめ
以上、アモキサンの特徴をまとめると以下のようになります。
- 三環系の抗うつ剤に属し、確かな抗うつ作用を持つ一方副作用も多い
- 他の三環系抗うつ剤に比べると、副作用は低減されている
- 抗うつ作用としては、特に意欲ややる気を持ち上げる効果に優れている
- 効果の出現が早く、服用開始後1週間程度で効果が見られる
- 1990年代は主力としてよく処方されており、現在でも三環系の中では処方頻度は高い