ベルソムラは2014年に発売された新しい睡眠薬です。
オレキシン受容体拮抗薬と呼ばれ、これまで主流であったベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは異なる作用プロセスを持つ睡眠薬です。
従来の睡眠薬に比べ革新的なプロセスを持つ薬ですが、評判はかなり高く、既に多くの方が使われている薬になります。
ここではこのベルソムラの概要と効果・副作用、及び評判などをご紹介します。
ベルソムラ(睡眠薬)の概要
ベルソムラは日本では2014年に発売された睡眠薬です。
睡眠薬としては新しい薬になります。
また、その作用プロセスも従来の睡眠薬とは異なり、新しいものになっています。
以下にベルソムラの基本情報をご紹介します。
睡眠薬としての系統
- オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンとは、覚醒に関係する物質です。
このオレキシンを遮断することにより、睡眠を促すというのがオレキシン受容体拮抗薬の特徴です。
従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬は脳内のGABAに働きかけることにより睡眠を促す効果がありますが、このオレキシン受容体拮抗薬はそれとは全く異なるプロセスを持つ新しい薬です。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約10時間
- 血中濃度最高点到達時間:約1.5時間
薬の効果は服用後約1.5時間で最大になり、約10時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になりますが、実際にはそれよりやや短く感じることが多いです。
ベルソムラに関しては、実際の効果が持続する時間は6~8時間程度とされています。
適応疾患
- 不眠症
ベルソムラの作用時間の長さと強さ
ベルソムラをはじめとした睡眠薬は、「作用時間の長さ」と「作用の強さ」という2つの軸で特徴が表されます。
睡眠薬の作用時間の分類
まず、睡眠薬の作用時間の4つの分類を見てみます。
- 超短時間型:作用時間が概ね6時間以内
- 短時間型:作用時間が6時間から12時間程度
- 中時間型:作用時間が12時間から24時間程度
- 長時間型:作用時間が24時間以上
どの作用時間の睡眠薬を使うかは、睡眠障害の種類によって異なります。
睡眠障害には以下の3つのタイプがあります。
- 入眠障害:なかなか寝付けない
- 中途覚醒:途中で起きてしまう
- 早朝覚醒:早朝に起きてしまう
睡眠薬の作用時間と、睡眠障害の種類の関係は概ね以下のようになります。
- 超短時間型:入眠障害
- 短時間型:入眠障害及び中途覚醒
- 中時間型:中途覚醒及び早朝覚醒
- 長時間型:早朝覚醒
ベルソムラは半減期が約10時間の短時間型の睡眠薬のため、主に入眠障害及び中途覚醒に使われる薬となります。
ただ、実際の使用に関しては、入眠障害よりも中途覚醒により有効性が高く、どちらかというと「寝付けない」という症状よりも「途中で起きてしまう」という症状に対し使われることが多いようです。
1.5時間という血中濃度最高点到達時間からすると入眠にも効きそうなものですが、この辺りが従来のベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは異なる特徴とも言えます。
ベルソムラの強さ
ベルソムラは確かな睡眠作用を持つ薬です。
これまでにない、オレキシンに作用する薬ということで発売前はどの程度の効果があるのか未知数であった睡眠薬ですが、ふたを開けてみると従来のベンゾジアゼピン系と遜色のない効果があるということがわかりました。
また、上記のように血中濃度最高点到達時間が1.5時間と短い割には服用してからすぐには眠くならず、半減期が10時間程度ということで、主として中途覚醒に効果のある睡眠薬と言えます。
睡眠薬の強さは量で調整できる
なお、睡眠薬の強さは量で調整できますので、実際にはその薬の強さより、作用時間の方が重要になります。
きちんと自分の症状に合った作用時間の睡眠薬を選んだうえで、作用の強さを調整するというのが一般的な選び方になります。
ベルソムラに関しては、特に「中途覚醒」に対して有効ですので、なかなか寝付けないという症状ではなく、途中で起きてしまいかつその後寝付けないという症状に対して適合性が高いと思われます。
ベルソムラの副作用
ベルソムラをはじめとした睡眠薬には主に以下の5つの副作用があると言われています。
- 耐性
- 依存性
- 眠気の持ち越し
- 健忘
- ふらつき
耐性
「耐性」とは、その薬を使い続けることによりその薬に体が慣れてしまい、同じ効果を得るためにより多くの量を使用しなければならない状態になることをいいます。
依存性
「依存性」とはその薬が体内に入ってくることが当たり前になってしまい、その薬なしではいられなくなってしまう状態になってしまうことをいいます。
眠気の持ち越し
「眠気の持ち越し」は睡眠作用が翌日まで残ってしまうことをいいます。
特に、作用時間が長い睡眠薬の場合には注意が必要です。
ルネスタは作用時間が短いため、眠気の持ち越しは起こりにくい薬となっています。
健忘
「健忘」は睡眠薬を服用後、自分のしたことを忘れてしまうことをいいます。
服用後にすぐに寝てしまえばこのようなことは起こらないのですが、何かをしようとすると、そのしたことを忘れてしまうことがあります。
翌朝起きてみたら意外なところに意外なものが置いてあった、などは健忘の1つの例と言えます。
ふらつき
「ふらつき」は睡眠薬の睡眠作用や筋弛緩作用(筋肉を和らげる作用)がふらつきにつながり、転倒などが起こりやすくなります。
この副作用も服用後に寝てしまえば問題ないのですが、服用後に活動しようとすると起こり得る副作用といえます。
また、寝ている途中でトイレに行くときなどには注意が必要な副作用と言えます。
ベルソムラの副作用は少ない
現在主流のベンゾジアゼピン系の睡眠薬に関しては、上記で記載したような副作用が出現することがままあります。
一方で、ベルソムラに関してはベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは作用プロセスが異なるため、上記のような副作用は大きく軽減されていると言われています。
特に、睡眠薬で問題になりやすい耐性や依存性の副作用が少ないというのは、大きな利点と言えます。
効果という点に関しては従来の睡眠薬と遜色なく、一方で副作用は少なくなっており、効果と副作用のバランスに優れているというのがベルソムラの大きな利点となっています。
ベルソムラはオレキシンを遮断する
既に述べたように、ベルソムラは2014年に発売された新しい睡眠薬で、オレキシン受容体拮抗薬というこれまでにない作用プロセスを持つ薬です。
作用プロセスとしては、これまでのベンゾジアゼピン系では眠らせる物質(GABA)を増やすというアプローチをとっていたのに対し、逆転の発想で眠らせない(覚醒させる)物質を減らすというアプローチをとったところにブレークスルーがあります。
要するに覚醒に関係するオレキシンという物質を減らし、眠りやすくするというのが従来と異なるベルソムラ独自のプロセスになります。
海外に先駆けて日本で発売される
従来であれば、海外ですでに発売されている薬が、何年か(場合によっては10年以上)遅れて日本でも発売されるケースというのが多いです(日本は審査が厳しい)。
そのため、海外では既に使用症例が多数あるため、日本でも比較的安心して使えるというケースが非常に多かったという歴史があります。
一方、このベルソムラは日本で先行的に発売された珍しいケースになります。
そのため、発売前には本当に効果があるのか、副作用は大丈夫なのかといった懐疑的な声もあったようですが、ふたを開けてみると確かな睡眠作用を持つ一方で副作用も少なく、とても評判のよい睡眠薬となっています。
ただし、一方でベルソムラを使ってもよく眠れないという声も聞きますので、やはりこの辺りは薬との相性があるようです。
よく使われている睡眠薬ランキングでは、ロヒプノール/サイレース、マイスリー、レンドルミンに次ぐ4位となっており、既に主流として使われている睡眠薬と言っても過言ではありません。
おそらく今後はより主力として処方される機会も増えていくのではないかと思われます。
参考記事:よく使われている睡眠薬ランキング
最大のメリットは副作用の少なさ
ベルソムラの利点は何といってもその副作用の少なさです。
睡眠薬というのは諸刃の剣のようなところがあり、使うとよく眠れるものの、使わないと眠れなくなっていまうということが往々にしてあります。
ベルソムラに関しては、依存性、耐性の副作用が少ないため、やめる際にも従来のベンゾジアゼピン系の睡眠薬よりはやめやすいのではないかと思われます。
ただし一方で、睡眠薬には身体的依存と精神的依存の2種類があります。
依存性、耐性が少ないというのは身体的依存が少ないということですが、精神的依存に関しては睡眠薬の種類に関わらず発生することがあります。
参考記事:睡眠薬や抗不安薬の依存性・離脱症状と実際にやめるのに苦労した話
そのため、依存性が少ないから大丈夫だと過信しすぎて使ってしまうのは危険です。
あくまで、必要な時に必要な量だけ使うということがこのベルソムラにおいても重要なことだと思います。
ベルソムラの特徴まとめ
以上、ベルソムラの特徴とまとめると、以下のようになります。
- オレキシンン受容体拮抗薬というこれまでにない作用プロセスを持つ
- 特に中途覚醒に有効で入眠作用はそれほど強くない
- 確かな効果がある一方で、副作用が少なくバランスがとてもいい睡眠薬
- 珍しく、世界に先駆けて日本で最初に発売された睡眠薬
- 概して評判もよく、新しい薬にも関わらず既によく使われている