イフェクサーはSNRIというカテゴリーに属する抗うつ剤です。
SNRIとは、SSRIと並び現在抗うつ剤の主流として使われているカテゴリーになります。
脳内のセロトニン及びノルアドレナリンの両方に作用することにより、うつ症状を改善させるのが大まかな作用プロセスになります。
ここでは、このイフェクサーの効果・副作用と特徴をご紹介します。
イフェクサーの概要
イフェクサーは日本では2015年に発売された新しい抗うつ剤です。
SNRIというカテゴリーでは3番目に発売された抗うつ剤になります。
ちなみに一番目のSNRIはトレドミンで、二番目がサインバルタになります。
日本では新しい部類に入る薬ですが、海外では1990年代から使われている実績のある抗うつ剤です。
以下にイフェクサーの基本情報をご紹介します。
抗うつ剤としてのカテゴリー
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SNRIとは、SSRIと並び現在主流として使われている抗うつ剤のカテゴリーの1つになります。
SSRIはセロトニンの再取り込みを阻害することで脳内のセロトニン濃度を高め、抗うつ作用を発揮しますが、SNRIは同時にノルアドレナリンの再取り込みも阻害することにより、意欲ややる気といった部分にも働きかける特徴があります。
つまり、セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するというダブルアクションがSNRIの特徴となります。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約9時間
- 血中濃度最高点到達時間:約6時間
薬の効果は服用後約6時間で最大になり、約9時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。
ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。
効果が出るまでには2週間程度かかる
また、抗うつ剤を使い始めた場合、効果が出現するまでは2週間程度の時間がかかります。
しっかりとした効果が出るまでは月単位の時間が必要です。
そのため、抗うつ剤の使い初めには効果が出てくるまでじっくりと我慢する必要があります。
適応疾患
- うつ病・うつ状態
イフェクサーの効果
抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。
抗うつ剤の5つのカテゴリー
抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。
- 三環系:効果は強いが副作用も強い
- 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
- SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
- SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
- NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある
カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。
既に述べたように、イフェクサーはSNRIに属します。
そのため、三環系などの古い抗うつ剤に比べると副作用が少なく、またSSRIとの比較では意欲ややる気を持ち上げるという効果が加わるという特徴があります。
SNRIの中でのイフェクサーの強さ
更にSNRIの中には、以下の3つの抗うつ剤が存在します。
これら3つの中では、イフェクサーはサインバルタと並び確かな効果を持つ抗うつ剤です。
SNRIの中ではトレドミンは効果が弱いので使用頻度は少なく、実質的にはイフェクサーとサインバルタがSNRIの標準薬となっています。
また、イフェクサーは、低量では主にセロトニンに作用し、ある程度の量を使うとノルアドレナリンにも作用するという、使用量により効果の出方が変わってくるという特徴があります。
この辺りは、低量からセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するサインバルタとは異なる特徴となります。
イフェクサーの副作用
SNRIの副作用の特徴
イフェクサーをはじめとしたSNRIは、古いタイプの抗うつ剤(三環系など)に比べると副作用は低減されています。
しかしながら、消化器系の症状を中心に依然として副作用は存在します。
また、副作用の種類は概ねSSRIと類似しています。
具体的には主に以下のような副作用があります。
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 性機能障害
- 眠気(不眠)
吐き気や食欲不振、下痢はSSRIやSNRIの代表的な副作用で、多かれ少なかれこれらのを使うと発生する副作用となります。
SSRIやSNRIはセロトニンの再取り込みを阻害することでセロトニン濃度を高めますが、セロトニンは胃腸にも存在し、そこにも作用してしまうためこれらの副作用が現れます。
これらの副作用に対処するために、胃腸薬が同時に処方されることもよくあります。
性機能障害もSSRIやSNRIではよく見られる副作用です。
眠気に関しては個人差が大きく、眠くなるという人もいれば逆に眠れなくなるという人もいて、個人差があります。
なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。
SNRIの中でのイフェクサーの副作用の特徴
胃腸系の副作用が出やすい
イフェクサーはSNRIの中では比較的副作用が出現しやすいと言われています。
代表的な副作用は上記に述べた吐き気や下痢といった胃腸系の症状です。
頭痛やだるさといった副作用もよく聞きます。
離脱症状に注意が必要
また、イフェクサーで注意が必要とされているのは離脱症状です。
抗うつ剤は全体的には離脱症状は少ないと言われていますが、イフェクサーに関しては比較的離脱症状が起こりやすいという報告があります。
具体的には、急に薬をやめるとシャンビリという症状(シャンシャンと耳鳴りがし、手足がビリビリする症状)が現れることがあります。
イフェクサーをやめる際には、急にやめるのではなく、徐々に減らしていくなどの対応が必要です。
このように、確かな効果をもつ一方、SNRIの中では比較的副作用が出やすいというのがイフェクサーの特徴となります。
他の抗うつ剤との比較
抗うつ剤の有効性と忍容性を調査したMANGA Studyという研究があります。
大変興味深いデータになりますので、ここでご紹介します。
有効性の比較
各抗うつ剤の有効性は以下のようになります。
(注)海外の研究であるため、日本未発売の薬も含まれる。また、古い抗うつ剤は対象外
有効性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レメロン/リフレックス | 24.4 |
②レクサプロ | 23.7 |
③イフェクサー | 22.3 |
④ジェイゾロフト | 20.3 |
⑤セレクサ | 3.4 |
⑥トレドミン | 2.7 |
⑦ウエルブトリン | 2.0 |
⑧サインバルタ | 0.9 |
⑨デプロメール/ルボックス | 0.7 |
⑩パキシル | 0.1 |
⑪プロザック | 0.0 |
⑫Davedax | 0.0 |
イフェクサーは3位となっており、有効性の高い抗うつ剤と評価されています。
忍容性(副作用の軽さ)の比較
また、忍容性(副作用の軽さ、薬を継続使用できるかどうか)は以下のようになります。
忍容性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レクサプロ | 27.6 |
②ジェイゾロフト | 21.3 |
③ウエルブトリン | 19.3 |
④セレクサ | 18.7 |
⑤トレドミン | 7.1 |
⑥レメロン/リフレックス | 4.4 |
⑦プロザック | 3.4 |
⑧イフェクサー | 0.9 |
⑨サインバルタ | 0.7 |
⑩デプロメール/ルボックス | 0.4 |
⑪パキシル | 0.2 |
⑫Davedax | 0.1 |
(データはkyupinの日記より取得、一部記載を変更)
イフェクサーは8位と、副作用という観点からはいまいち(副作用が大きめ)という評価になっています。
有効性は高いが副作用も多い
このMANGA Studyの結果をまとめると、イフェクサーの有効性は3位、忍容性は8位となっています。
この結果を文字通りに受け取ると、イフェクサーは確かな効果を持つ一方、忍容性に難がある(副作用が出やすい)と言えます。
つまり、ハイリスクハイリターンな抗うつ剤となっています。
ただ、このMANGA Studyは臨床の現場とはちょっと感触が違うという話も聞きますので、参考程度に見ておくとよいと思います。
日本と海外におけるSNRIの歴史の比較
世界的には最古のSNRI
上記でも述べていますが、イフェクサーの日本での発売は2015年ですが、海外では1990年代から使われているSNRIとしてはスタンダードな抗うつ剤です。
日本では、
トレドミン⇒サインバルタ⇒イフェクサー
という順番で発売されましたが、世界的には
イフェクサー⇒トレドミン⇒サインバルタ
という順番となっており、イフェクサーは最も歴史が古く、かつよく使用されてきた抗うつ剤になります。
近年はサインバルタに押される
ただし、世界的なトレンドとしては、サインバルタが発売されてからは、イフェクサーよりサインバルタが処方されるケースが多くなりました。
そして、現状ではサインバルタがイフェクサーの売り上げを抜いています。
なぜサインバルタの方が売れているのかというと、効果と副作用のバランスを考えた場合、イフェクサーよりサインバルタの方が一般的に優れているためです(もちろん抗うつ剤なので個人差はあると思います)
なお、「よく使われている抗うつ剤ランキング」においても、イフェクサーはサインバルタの後塵を拝しています。
参考記事:よく使われている抗うつ剤ランキング
上記のManga Studyの結果ではイフェクサーの方がサインバルタよりも有効性が高いように思えますが、臨床の現場においてはサインバルタの方が評価は高いです。
そのため、日本ではイフェクサーは新しい抗うつ剤ですが、今後広く普及していくかどうかという点に関しては未知数な部分があります。
個人的には、SNRIが必要な場合にはまずサインバルタを処方し、もし合わない場合にはイフェクサーを使用するというような代替的な使われ方をする機会が多くなるのではないかと想像しています。
いずれにせよ、抗うつ剤というのは合う合わないの個人差が大きいため、複数の選択肢があるということは治療の柔軟性を考えるうえでよいことだと思います。
イフェクサーの特徴まとめ
以上、イフェクサーの特徴をまとめると以下のようになります。
- 日本では新しい抗うつ剤だが、世界的には1990年代から使われている歴史のある抗うつ剤
- SNRIというカテゴリーに属し、セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用する
- 確かな抗うつ効果を持つ反面、SNRIの中では副作用は出やすい
- やめる際の離脱症状はわりと出やすい方なので、徐々に減らすなどの工夫が必要
- トレドミンよりは使われているが、サインバルタよりは使われておらず、SNRIの中では2番手の存在