ジェイゾロフトはSSRIというカテゴリーに属する抗うつ剤です。
SSRIとは現在抗うつ剤の主流として使われているカテゴリーになります。
ジェイゾロフトは、抗うつ剤の中でも効果と副作用のバランスに優れていると言われています。
ここでは、このジェイゾロフトの効果・副作用と特徴をご紹介します。
ジェイゾロフトの概要
ジェイゾロフトは日本では2006年に発売された抗うつ剤です。
SSRIというカテゴリーでは3番目に発売された抗うつ剤になります。
ちなみに1番目がルボックス/デプロメール、2番目がパキシルです。
ジェイゾロフトは海外では1990年代から使われている薬ですので、それなりの歴史のある抗うつ剤です。
以下にジェイゾロフトの基本情報をご紹介します。
抗うつ剤としてのカテゴリー
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
SSRIとは、現在主流として使われている抗うつ剤のカテゴリーの1つになります。
セロトニンの再取り込みを阻害することで脳内のセロトニン濃度を高め、抗うつ作用を発揮する薬になります。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約24時間
- 血中濃度最高点到達時間:約7時間
薬の効果は服用後約7時間で最大になり、約24時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。
ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。
また、抗うつ剤を使い始めた場合、効果が出現するまでは2週間程度の時間がかかります。
しっかりとした効果が出るまでは月単位の時間が必要です。
そのため、抗うつ剤の使い初めには効果が出てくるまでじっくりと我慢する必要があります。
適応疾患
- うつ病・うつ状態
- パニック障害
ジェイゾロフトの効果
抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。
抗うつ剤の5つのカテゴリー
抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。
- 三環系:効果は強いが副作用も強い
- 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
- SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
- SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
- NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある
カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。
ジェイゾロフトはSSRIに属し、効果と副作用を考えるとバランスのよい抗うつ剤となっています。
SSRIの中でのジェイゾロフトの強さ
更にSSRIの中には、以下の4つの抗うつ剤が存在します。
- ルボックス/デプロメール
- パキシル
- ジェイゾロフト
- レクサプロ
これら4つの中では、ジェイゾロフトの強さは普通の部類になります。
SSRIの中では標準的な抗うつ作用を持つということがジェイゾロフトの特徴の1つとなります。
ちなみにこの4つの中では、一般的にルボックスが一番弱く、パキシルが一番強いと言われています。
ドーパミンにも作用する
ジェイゾロフトの特徴として、ドーパミンにも作用するというものがあります。
これは他のSSRIには見られない、ジェイゾロフトのみが持つ特徴です。
このドーパミンが、意欲ややる気に働きかけ、抑うつ症状を改善することが期待されます。
ジェイゾロフトを使うとマイルドな気分上昇がみられると言われていますが、これはドーパミンが一部作用していることも考えられるのではないかと思います。
産後うつ病に効果がある
また、ジェイゾロフトは産後うつ病に効果を認めると言われています。
乳汁への移行も少ないことから、産後うつには処方されることが多いようです。
男性より女性の方が効きやすい
ジェイゾロフトは男性より女性の方が効きやすいと言われています。
理由はよくわからないのですが、経験的には女性に対しての有効性の方がやや高いようです。
ジェイゾロフトは三環系抗うつ剤やパキシルに比べると効果がマイルドなことや、比較的副作用が少ないことも関係しているかもしれませんが、根本的な理由はよくわかっていません。
理由はわからないけど経験的に知られている、ということは精神科の薬の中ではしばしばありますが、この中の1つの事例と言えそうです。
対人恐怖症に有効
ジェイゾロフトは対人恐怖症にも有効であると言われています。
例えば、人前で話をするときに緊張でほとんど思い通りにしゃべれなかった人が、ジェイゾロフトを使うと大丈夫になったというような事例が挙げられます。
ジェイゾロフトはSSRIなのでセロトニンに集中的に作用し、セロトニンの増加により精神的な余裕が生まれ、結果として対人恐怖症に効果が出るというのが背景にあるプロセスではないかと考えられています。
パニック障害にも使われる
上記の適応にあるように、ジェイゾロフトはパニック障害にも使われる薬です。
パニック障害とは、突然不安に襲われ、強烈な動悸や発汗などが起こる症状です。
ジェイゾロフトはこのパニック障害の予期不安を抑える効果があるとされています。
予期不安というのは、また不安に襲われるのではないかという気持ちが、パニック障害を引き起こしてしまうという、ある意味不安が不安を呼んでしまう症状です。
ジェイゾロフトの服用により、この予期不安はある程度軽減されると言われています。
ジェイゾロフトの副作用
SSRIの副作用の特徴
ジェイゾロフトをはじめとしたSSRIは、古いタイプの抗うつ剤(三環系など)に比べると副作用は低減されています。
しかしながら、消化器系の症状を中心に依然として副作用は存在します。
具体的には主に以下のような副作用があります。
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 性機能障害
- 眠気(不眠)
吐き気や食欲不振、下痢はSSRIの代表的な副作用で、多かれ少なかれSSRIを使うと発生する副作用となります。
SSRIはセロトニンの再取り込みを阻害することでセロトニン濃度を高める薬ですが、セロトニンは胃腸にも存在し、そこにも作用してしまうためこれらの副作用が現れます。
これらの副作用に対処するために、胃腸薬が同時に処方されることもよくあります。
性機能障害もSSRIではよく見られる副作用です。
眠気に関しては個人差が大きく、眠くなるという人もいれば逆に眠れなくなるという人もいて、個人差があります。
なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。
しかしながら、ある程度時間が経っても、副作用がなくなることはなく、一定程度残り続けます。
そういった意味で、抗うつ剤を選ぶ際には副作用の相性も大切な要素になります。
SSRIの中でのジェイゾロフトの副作用の特徴
ジェイゾロフトはSSRIの中で副作用は多くもなく、少なくもなく標準的なレベルとされています。
吐き気や下痢といった胃腸系の副作用はよく見られるようですが、上記のように使っているうちに収まってくるくることが多いです。
SSRIの中では、効果も普通で副作用の大きさも普通というのがジェイゾロフトの特徴となります。
この辺りが、ジェイゾロフトは抗うつ剤として「標準的」や「バランスがいい」と言われるゆえんです。
他の抗うつ剤との比較
抗うつ剤の有効性と忍容性を調査したMANGA Studyという研究があります。
大変興味深いデータになりますので、ここでご紹介します。
有効性の比較
各抗うつ剤の有効性は以下のようになります。
(注)海外の研究であるため、日本未発売の薬も含まれる。また、古い抗うつ剤は対象外
有効性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レメロン/リフレックス | 24.4 |
②レクサプロ | 23.7 |
③イフェクサー | 22.3 |
④ジェイゾロフト | 20.3 |
⑤セレクサ | 3.4 |
⑥トレドミン | 2.7 |
⑦ウエルブトリン | 2.0 |
⑧サインバルタ | 0.9 |
⑨デプロメール/ルボックス | 0.7 |
⑩パキシル | 0.1 |
⑪プロザック | 0.0 |
⑫Davedax | 0.0 |
ジェイゾロフトは、対象となる12個の抗うつ剤のうち、4位と有効性は上位に位置しています。
忍容性(副作用の軽さ)の比較
また、忍容性(副作用の軽さ、薬を継続使用できるかどうか)は以下のようになります。
忍容性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レクサプロ | 27.6 |
②ジェイゾロフト | 21.3 |
③ウエルブトリン | 19.3 |
④セレクサ | 18.7 |
⑤トレドミン | 7.1 |
⑥レメロン/リフレックス | 4.4 |
⑦プロザック | 3.4 |
⑧イフェクサー | 0.9 |
⑨サインバルタ | 0.7 |
⑩デプロメール/ルボックス | 0.4 |
⑪パキシル | 0.2 |
⑫Davedax | 0.1 |
(データはkyupinの日記より取得、一部記載を変更)
忍容性は2位となっており、副作用という観点から、使い易い抗うつ剤という評価になっています。
ジェイゾロフトはバランスがいい
つまり、このMANGA Studyによると、ジェイゾロフトの有効性は4位、忍容性は2位となっており、とても効果と副作用のバランスがよい抗うつ剤であることがわかります。
ただ、このMANGA Studyは臨床の現場とはちょっと感触が違うという話も聞きますので、参考程度に見ておくとよいと思います。
パキシルやレクサプロとの競合
ジェイゾロフトは上記のMANGA Studyでもあるように効果と副作用のバランスのとれた抗うつ剤です。
にも関わらず、現在ではSSRIの中ではやや日陰な存在の抗うつ剤となってしまっている感があります。
理由としては、同じSSRIとしては効果はパキシルの方が強く、副作用はレクサプロの方が少ないため、
- 効果を重視する人にはまずパキシル
- 副作用が気になる人にはまずレクサプロ
というロジックが存在しているからだと考えられます。
もちろん抗うつ剤は個人差が激しいため、レクサプロやパキシルが合わない人には処方される可能性はあると思いますが、今となっては最初に処方されるケースというのは少なくなってきているようです。
一方で、パキシルはイライラが強くなってダメだったけどジェイゾロフトはそれほど副作用に苦しまずに使えた、レクサプロはあまり効果がなかったけどジェイゾロフトでは効果があった、といったような話はよく聞きますので、依然として抗うつ剤としては貴重な存在なのだと思います。
実際のところ、「よく使われている抗うつ剤ランキング」でも、依然としてジェイゾロフトは上位をキープしていることがわかります。
参考記事:よく使われている抗うつ剤ランキング
ジェイゾロフトの特徴まとめ
以上、ジェイゾロフトの特徴をまとめると以下のようになります。
- 効果と副作用のバランスのとれた抗うつ剤
- SSRIに特徴的な胃腸に関わる副作用は出現しやすい
- セロトニンのみならず、ドーパミンにも作用する
- 産後うつに有効であるという報告がある
- 男性より女性の方が効きやすいという報告がある
- 対人恐怖症やパニック障害にも用いられることがある
- 依然としてよく使われている抗うつ剤の1つである