ノリトレン(三環系抗うつ剤)の効果・副作用と特徴

うつからの回復

ノリトレンは三環系というカテゴリーに属する抗うつ剤です。

三環系とは、化学構造中に環状構造が3つあることから由来している名前で、抗うつ剤のカテゴリーとしては最古のものになります。

ここではこのノリトレンの効果・副作用と特徴をご紹介します。

ノリトレンの概要

ノリトレンは日本では1971年に発売された抗うつ剤です。

三環系のカテゴリーの中でも第一世代と呼ばれる古い世代の抗うつ剤になります。

以下にノリトレンの基本情報をご紹介します。

抗うつ剤としてのカテゴリー

  • 三環系抗うつ剤

三環系は、抗うつ剤としては最古のカテゴリーとなります。

まさに抗うつ剤はこの三環系からスタートしています。

作用時間

  • 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約27時間
  • 血中濃度最高点到達時間:約5時間

薬の効果は服用後約5時間で最大になり、約27時間で血中の濃度が半分になります。

半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。

ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。

あくまで参考程度に見ておくとよいと思います。

なお、一般的に抗うつ剤は服用してから効果が現れるまでに2週間以上かかるといわれています。

この2週間という期間は、その期間が過ぎたら効果をすぐに実感できるということではなく、2週間過ぎたぐらいから徐々に効果が表れ始めるという意味です。

実際に十分な効果が表れるまでには月単位の時間がかかると言われています。

適応疾患

  • うつ病・うつ状態

ノリトレンの効果

抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。

抗うつ剤の5つのカテゴリー

抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。

  • 三環系:効果は強いが副作用も強い
  • 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
  • SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
  • SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
  • NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある

カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。

ノリトレンは三環系に属し、古いカテゴリーの抗うつ剤となります。

効果は強いものの、副作用も強いという特徴を持つことになります。

三環系の中でのノリトレンの強さ

更に三環系の中には、以下のような抗うつ剤が存在します。

三環系の抗うつ剤は更に第一世代と第二世代の2つの分けることができます。

第二世代の抗うつ剤は、効果は第一世代と同等で副作用が低減しているという特徴があります。

ノリトレンは三環系の中で第一世代に属し、確かな効果を持つ一方、副作用も多いという特徴があります。

ノリトレンの効果の特徴

三環系の抗うつ剤には、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やすという効果がありますが、ノリトレンはノルアドレナリンを増やす効果に優れている薬です。

つまり、意欲ややる気を上げる効果が強い抗うつ剤と言えます。

また、その作用の強さに関しては、トリプタノールには劣るものの、他の三環系の抗うつ剤とは概ね同等と言われています。

効果の出現が早い

ノリトレンの1つの特徴として、効果の出現が早いという点が挙げられます。

通常抗うつ剤は使い始めて2週間程度してから効果が出始めると言われていますが、このノリトレンに関しては、1週間程度から効果が出現すると言われています。

抗うつ剤を服用してから効果が現れるまでは副作用のみが作用し、とても苦しい状態が続きます。

この苦しい状態の期間が短縮されるというのは、大きなメリットの1つと言えます。

ノリトレンの副作用

三環系の副作用の特徴

ノリトレンをはじめとした三環系抗うつ剤は、効果が強い反面、副作用も強いという難点があります。

三環系は古いタイプの抗うつ剤なので、セロトニンとノルアドレナリンのみならず様々な受容体に作用してしまうため、多くの副作用が存在します。

主な副作用としては、抗コリン作用と抗ヒスタミン作用によるもの2つに分類することができます。

抗コリン作用の代表的なものとしては、

  • 口渇
  • 便秘
  • 目のかすみ
  • 尿閉
  • 眼圧上昇

抗ヒスタミン作用としては、

  • 眠気
  • 体重増加

などがあります。

また、その他にも

  • 手が震える
  • 立ちくらみ

といった副作用もあります。

要するに三環系の抗うつ剤には多くの副作用が存在し、またその強さの程度も個人差はありますがかなり不快なレベルまで感じることがあります。

そのため、副作用に耐えられずに脱落してしまう人も多くいます。

三環系の抗うつ剤は現在主流のSSRIやSNRIに比べても強い抗うつ作用を持つ薬が多いのですが、このような副作用が多いという難点から現在では処方される頻度が減ってきています。

なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。

それでもなお多くの副作用が残るというのが三環系の抗うつ剤の特徴です。

三環系の中でのノリトレンの副作用の特徴

ノリトレンは同じ三環系抗うつ剤のトリプタノール脱メチル化物(代謝される過程でできる物質)のため、トリプタノールの効果、副作用を引き継ぎながらも、その大きさがやや低減されているという特徴があります。

そのため、副作用に関してはトリプタノールよりは少なくなっています。

特に抗コリン作用は低減されていると言われていますが、それでもなお多くの副作用があります。

この辺りはやはり三環系の抗うつ剤ということで、副作用には注意して使用していく必要があるかと思います。

ノリトレンの特徴と所感

ノリトレンはトリプタノールが原型となった抗うつ剤です。

上記でも述べていますが、トリプタノールを代謝する過程でできる物質がノリトリプチリン(ノリトレン)になります。

そのため、効果はトリプタノールには劣るものの、副作用もトリプタノールより少ないという特徴を持ちます。

ただし、作用の仕方としては、トリプタノールはセロトニンとノルアドレナリンの両方を概ね同等に増やすのに対し、ノリトレンは特にノルアドレナリンへの効果が高く、両者の効果のプロファイルは変化しています。

個人的にはこのノルアドレナリンに優位に作用する抗うつ剤というのは、使用する時期を選ぶと思います。

というのは、うつ病治療においては、そもそもまずはきちんと休息を取り、枯渇してしまったエネルギーを溜めるのが重要です。

しかしながら、いきなりこのノリトレンのような活動性を上げる抗うつ剤を使ってしまうと、しっかし休むべき時に休まず、結局治療が長引くということにもなりかねないと思うからです。

このノリトレンを使う場合のシチュエーションとしては、

  • しっかり休み、エネルギーは溜まってきたもののいまいち意欲ややる気が起こらず、活動できない

という場合や、

  • 仕事をしていて目先のプロジェクトだけはなんとか乗り切りたい

というような場合が適しているのではないかと思います。

参考記事:うつ病治療の2つの方向性(状態を持ち上げるか、心身を休ませるか)

今となっては処方される頻度が少ない抗うつ剤のように思いますが、三環系の中で副作用が少なめの抗うつ剤を使用したいというような場合にはいまだに処方される機会はあるようです。

以上、ノリトレンの特徴をまとめると以下のようになります。

  • 三環系の抗うつ剤に属し、効果は強いものの、副作用も強い
  • 効果は特にノルアドレナリンへの作用が強く、意欲ややる気を上げる働きがある
  • 効果の出現が比較的早い
  • トリプタノールの代謝物質で、効果、副作用はトリプタノールよりは劣る
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