会社というのは、基本的に精神疾患に理解があまりないところですが、その中でもかなりひどい例がありました。
ある男性が育休を取得した後にパタハラ(パタニティハラスメント)を受け、うつ病を発症し、休職に追い込まれました。
更にひどいのが、休職後に医師の許可が出て復職を願い出たものの、会社がそれを拒否したというのです。
そして、その男性は会社に対し訴訟を起こしたという話です。
ここでは、この痛ましいニュースと共に、個人的な所見などを交えてご紹介します。
元ソース:日経のニュース
ニュースの概要
まずは、ニュースの全体像です。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券のカナダ国籍の男性社員が26日、正当な理由なく休職命令を受けたとして、地位保全や賃金の仮払いを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。
職場で育児休業の取得を機に仕事を減らされるなどの嫌がらせ「パタニティ(父性)ハラスメント」(パタハラ)でうつ病を発症し、復職可能と診断を受けた後に休職命令を受けたという。
これを読むだけで、多くの出来事が濃縮されており、複雑なニュースのように感じますが、要するに会社から不当な対応を受けたことに対する訴えを起こしたという話です。
以下、細部についてご紹介していきます。
育児休業を機にパタハラを受ける
この男性は国内の大手証券会社に勤める社員です。
パートナーの女性の出産を機に育休を取得することになります。
代理人弁護士によると、15年に婚姻関係のないパートナーの女性が出産することになり、育休を申請したが、「書類の不備」などを理由に手続きに時間がかかり、許可が下りるまで2カ月以上かかった。
そもそもこの記述を見る限り、育休に対し会社側が難色を示している様子がうかがえます。
男性の育休はまだまだ取得率が低いと言われていますが、このように会社側の対応の問題がまだまだあるように思います。
育休後のパタハラ
そして、育休後、パタハラを受けます。
復職後は仕事を減らされたり深夜の業務を指示されたりして、うつ病を発症して休職。
これに対し、当事者のグレンさんは以下のように述べています。
グレンさんは記者会見で「育休を取った社員は仕事で使えないという偏った考え方が社内にあった」と主張した。
グレンさんの勤めている会社がどのようなカルチャーなのかはよくわかりませんが、このような考えをもった会社はとても多いように思います。
そもそも、国としては男性の育休取得率を上げようとしていますが、会社からすると休みを取られるとその分の穴埋めをしなければいけないし、会社より家庭を優先する人とも捉えられ(家庭を優先するのは当たり前だと思いますが)、本音では促進したくないという部分があるのではないでしょうか。
ワークライフバランスをうたっている会社は多いですが、実際に腹の底から指示している会社がどのくらいあるのかは疑問なところです。
復職を拒否される
育休後にパタハラを受けるだけでも十分にひどい話ですが、この話が更に痛ましいのは、うつ病で休職後に、医者の許可を得て復職しようとしたところ、会社がそれを拒否したということです。
17年7月に産業医が復職可能の診断を出した後も会社側は「体調面の配慮」を理由に元の業務に戻すことを拒絶し、10月18日付で無給の休職命令を出したという。
ここまでくると、はっきり言ってこの会社のカルチャーがおかしいとかいう問題ではなく、完全に違法というレベルではないでしょうか。
そもそも医者の診断書には法的な拘束力があるため、その診断書を元に復職を願い出た場合、会社側は拒否できないはずです。
にも拘わらず拒絶するというのは、完全に一線を越えているように思います。
2つの過ちを犯す
このケースでは会社は2つの過ちを犯していると言えます。
まず1つは育休をとった社員に対するパタハラです。
言わずもがなですが、パタハラは犯罪です。
道徳的におかしいという以上に、法律で罰せられる対象となります。
2つ目は復職の拒否です。
こちらも道徳的な話以前に、法的におかしな話です。
私は当事者ではなく、あくまでもニュースレベルの情報しか知りませんが、これが真実なのであれば、この会社のカルチャーは完全に終わっていると言えます。
そもそも証券会社という業態自体が成果主義の色が濃く、社員にやさしくないのかもしれませんが、それにしてもこれはひどすぎると言わざるをえません。
社員を一体なんだと思っているのでしょうか。
氷山の一角にすぎない
この事例が表に出てたのは、当事者が声を上げて訴訟に踏み切ったからです。
現実には、このニュースにあるような対応をされたものの、泣き寝入りをしている人は非常に多くいると思います。
本当に会社って何様だって感じです。
本来会社と社員は対等な関係なはずですが、実際にはそうはなっておらず、会社に社員が一方的に尽くすという形になっていることが多いです。
そして何か会社にとっての不都合があると、このケースのような社員を使い捨てようとする。
正直聞いていて胸糞が悪くなってきます。
このケースのグレンさんのように、声を上げ、表に出てくることで、会社側の対応が変わってくることに期待するしかないのでしょうか。
いずれにせよ、勇気を出して声を上げたグレンさんには個人的には拍手を送りたいを思います。