うつ病に関わる薬は、量を減らしたり止めたりするタイミングがとても難しいと感じます。
基本的には体調がいい状態で安定していることが薬を減らす必要条件だと思われますが、しばしば体調の悪い時にこそ薬を減らそうとしてしまうときがあります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
ここではその背後にある心理を、私の経験に基づいてご紹介したいと思います。
なぜ調子の悪い時に薬を減らそうとするのか
調子が悪い時というのは、その調子の悪さの原因を何かに求めがちです。
わけもわからず調子が悪い状態が続いているというのはとても苦痛な状態なので、その不安を少しでも和らげるために何かしらかの原因を特定したいという心理が働きます。
特に理由もなく体調が悪いという状態はとてもよく起こります。一種の体内サイクルのようなものなのかもしれません。
しかしながら、その理由の矛先がしばしば薬に向かってしまうことがあります。
毎日ちゃんと飲んでいるのにこんなに体調が悪いじゃないか、この薬は意味がないんじゃないか、と。
もっとひどくなると、そもそも体調が悪いのは薬が悪さをしているせいなのではないかと疑ってしまうこともあります。
このような心理が行き過ぎてしまうと、体調が悪いにも関わらず薬を減らすという矛盾した行動に走ってしまうことがあります。
私の経験上からも、体調の悪さの原因が薬にあるということはごくごく稀です(かつて1度だけ明らかに薬が悪さをしたことはありましたが、正直稀な例です)
体調が悪い時においても、薬は基本的に効果を発揮してくれています。
このような状態で薬を減らしたり、止めてしまうと、その後は更に体調が悪化することになりかねません。
私も過去覚えているだけで2回体調の悪い時に薬を減らしたことがありましたが、2回ともその後体調は奈落の底へ落ちていきました(とてもとても大きな失敗だったと思います)
経験上、基本的に体調が悪い時にはあまり薬をいじらない方が無難です(もちろん薬の調整はお医者さんと相談してください)
しんどいですが、とにかく休んで回復を待つというのがやはり王道なのではないかと思います。
体調がいいときは薬を減らそうとは思わない
逆に、体調がいいときは薬を減らそうとはなかなか思いません。
なぜなら、体調がいいからです。
つまり、今の体調のよさが続いてほしいので、あえて薬を減らして体調を悪化させるリスクをとろうとは思わないのです。
薬を飲んでこの体調のよさが維持されるのであれば、それでいいじゃないかと薬を飲むことすら前向きに捉えることができてしまいます。
薬をより必要とする体調の悪い時に減らしたいと考え、薬が必要ないかもしれない体調のよいときには減らそうとは考えない、この矛盾に人間の心理の複雑さが隠れているように思えてなりません。
薬は継続して使うことに意味がある
特に、抗うつ剤という薬は、継続して使うことに意味があります。
ある程度の期間しっかりと使い、血中濃度が安定してこないとなかなか効果が現れません。
そして、一旦やめてしまうと、元の状態に戻すにはかなりの時間がかかります。
このような薬を、一時的な体調不良によりやめたり減らしたりすることはとても危険です。
上記のように、薬は自分の認識できないところで効果を発揮してくれていることが多々あるため、薬を無理にやめたがゆえに更に体調が悪化するということにもなりかねません。
そのため、体調が悪いときに薬を減らしたりやめたりすることは悪手としかいえません。
もちろん薬そのものが明らかに悪さをしている時には、医者と相談して薬を調整する必要がありますが、そうでないのであれば変更することはかなりのリスクを伴います。
薬をやめるべき時というのは、体調の悪いときではなく、体調のよい時です。
それも、体調のよい日がしばらく続き、薬がもう必要ないと心から思えた時です。
このことを間違えてしまうと、体調悪化のループにはまってしまうことになりかねませんので注意が必要です。