うつ病関連の本というのは巷に溢れかえっていますが、どういう回復プロセスを辿るかについて詳細に書かれている本というのはあまり多くないような気がします。
そんな中で、「うつ病はこころの骨折です」という本は、うつ病回復までのプロセスがわかりやすく描かれておりとても参考になります。
とても参考になるどころか、この本のおかげで、現在自分がうつ病のどのフェーズにいて、今は何をすべきで、今後どのような経過をたどる可能性が高いかを学ぶことができました。
私がこれまでに読んだうつ病関連の本では間違いなくトップ3に入る良書です。
ここでは、この本の内容を踏まえながら、個人的な所感を中心にご紹介したいと思います。
うつ病は心の風邪ではなく骨折
この本ではうつ病を骨折に例えています。
なぜ骨折かと言うと、骨折というのは骨が折れた状態であり、一定期間ギブスでしっかりと患部を固定し、きちんと骨がついた後にリハビリを徐々に行って患部の回復を図っていく、というプロセスがうつ病の回復と類似しているためです。
うつ病も心が折れた状態であるため、抗うつ剤というギブスをはめてしばらくの間安静にし、症状がある程度治ってから徐々にリハビリをして回復させる、というようなプロセスになります。
よくうつ病を風邪に例えることがありますが、まったくもって意味がわかりません。
この本のように、骨折の方がよっぽど説明としては的を得ていると思います。
うつ病回復の7つのステップ
そして、この本では回復のステップというのを7つに分けて説明をしています。
具体的なステップは、
- 医者に行く
- 薬を飲む
- 休める環境を用意する
- ひたすら休む
- 運動する
- 職場復帰に向かう
- うつ病になった意味を見出す
の7つです。
1、医者に行く
最初のステップが医者に行くことです。
これは、医者に行かないと、そもそも自分に起こっている症状が一体何者かがわからないため、最初のステップとしては至極当然のことになります。
そしてこのステップ、意外とハードルが高いです。
というのは、そもそも精神科に行くということ自体に心のハードルがあるのと、そもそも自分が精神疾患だと思いたくないという複雑な気持ちも混在するためです。
また、やはり未だに精神科というのは特殊な科というイメージがあるため、なんとなく後ろおめたい感じがするのもハードルを高くする要因の1つになっているように思います。
いずれにせよ、まず最初のステップは医者に行き、自分の状態をきちんと診断してもらうというところからはじまります。
2、薬を飲む
この薬を飲むというハードルも意外と高いです。
といのはやはり精神科の薬というのは人格を変えてしまいそうで、なにやら怖いイメージがあるからです。
実際には全くそんなことはないのですが、やはり初めてだとなかなか薬を使いにくい(使いたくない)というのは自然の気持ちのような気がします。
今となっては薬の重要性は認識しているのですが、初めての人にとってはやはり1つのハードルになるところではないかと思います。
3、休める環境を用意する
うつ病からの回復にあたって、しっかりと休める環境があるというのは非常に重要なポイントです。
心が休まらない自分にとって居心地位の悪い環境の中だと、なかなか回復していくのは難しいのが現実です。
もし既に自宅が自分にとって心地よい環境であるならば問題ないのですが、もしそうでない場合には、休むための環境というのを作る必要があります。
この環境次第で、回復までの期間が大きく変わるといっても過言ではありません。
4、ひたすら休む
しっかり休める環境が用意できたら、あとはひたすら休みます。
ここでいう休むというのは、とにかくひたすら寝て、ひたすらぼーっとすることです。
間違っても無理に何か活動したりしてはいけません。
例え自分の好きなこと(趣味など)であっても、この時期に活動をすることは百害あって一利なしです。
なによりもまず大切なのは、「骨折してしまった心」を安静にすることにより修復することなのです。
ですので、この時期にはとにかくひたすら休むということに徹する必要があります。
5、運動する
とにかくよく寝て、ぼーっとしてひたすら休んでいると、徐々にエネルギーが溜まってきます。
そしてある程度エネルギーが溜まってくると、今度は次第に何かしたいという気持ちが自然と芽生えてきます。
このような気持ちが現れてきたら、次のステップへと進むサインとなります。
この次のステップとは、「運動する」ことになります。
ここでいう運動は、サッカーとはバスケとかの激しい運動ではなく、散歩のような緩やかな運動のことです。
運動の目的
この時期に運動を行う目的は、体力を向上させるためです。
うつ病になる過程において、体力はほぼゼロにまで落ち込んでいます。
そして、しっかり休むことでエネルギーは回復してくるのですが、実際に動くための体力は、当然のことながら動かないと回復しません。
ですので、徐々に体を動かし、体力を回復させていくというのがここでの狙いになります。
運動の種類
実際にはどのような運動がいいのでしょうか?
個人的には「散歩」を大いに勧めます。
散歩はなにより気楽に行うことができ、負荷も少なく、また自分で距離を調整できるのでとても始めやすい活動です。
また人間というのは、古来から歩くようにできている動物ですので、歩くこと自体が心身にプラスの影響をもたらします。
このような理由から、個人的には散歩が一押しなのですが、もちろんその他の運動でもよいと思います。
ざっと思いつくところでは、軽いジョギング、水泳なのでしょうか。
ポイントは、負荷がそれほど高くないこと、自分の体調に応じて調整が効くことです。
このような条件を満たすものであれば、他の運動でもよいのではないかと思います。
6、職場復帰に向かう
しっかりと休みエネルギーが溜まり、運動することにより体力が回復してきたら、いよいよ職場復帰に向かいます。
まず、職場復帰に向かう前提条件としては、
- 心身共にある程度安定している
- 日々を普通に過ごせる(身の回りのことは問題なく行える)
- 体力が十分回復している
- 生活リズムが安定している
といったことが必要です。
これらを踏まえたうえで、職場復帰に向かっていくことになります。
復帰に向けた日々の過ごし方
職場復帰に向けた過ごし方としては、1日を家の中で過ごすのではなく、外で過ごす必要があります。
というのは、当然のことながら、家の中と外では必要とされるエネルギー量が異なるため、職場復帰に当たっては外で過ごすことに慣れておく必要があるからです。
個人的にはこの時期には図書館で過ごすことをおすすめします。
図書館の良い点としては、
- 無料で使える
- 営業時間が一般的な会社の勤務時間に近い
- 人の目がある
- たくさんの本があり、リハビリになる
などなど多くの点が挙げられます。
通勤練習
職場への復帰に当たっては、通勤練習も1つの大きな課題です。
実際に会社に行くことを想定して、交通機関を利用して会社の近くまで行き、そのまま帰ってくる、もしくは図書館などに寄ってから帰ってくるということを何度か繰り返します。
通勤練習を事前にしておくと、実際に出勤時の緊張を和らげることができますので、是非とも事前に行っておくことをおすすめします。
7、うつ病になった意味を見出す
正直この最後のステップはとても難しいです。
うつ病になる原因というのは人それぞれですので、その意味を考えるのもケースバイケースで決まった答えがあるわけではありません。
例えば、シンプルに過労でうつ病になった場合には、自分の限界を把握し、無理をしない働き方に変えるというのが1つの答えになるのかもしれません。
一方で、上司からのパワハラによりうつ病に陥ったような場合には、意味を見出すのは難しいのではないかと思います。
意味を考えるよりも、運が悪かったという身もふたもない結論がそこには潜んでいるかもしれません。
ただ、いずれにせよ、うつ病になったということは、それまでの人生でどこかに無理があったというサインなので、より自分にとって心地よい生き方はどういうものかということを考えるよいきっかけにはなるのではないかと思います。
うつ病が長引き慢性化する原因
最後になりますが、本書で興味深いのがうつ病が長引く場合の2つの要因の説明です。
以下、本からの引用になります。
うつ病の回復が長引き慢性化する入り口は2つあります。
一つ目の入り口は意外なことに発症直後です。ここで十分な質の良い休息を取れないことが慢性化の最大の原因です。もうひとつの慢性化の入口は復職間際です。復職の準備を進める中で一時的に揺れが生じて症状が悪化し、その回復を待たずに復職してしまう場合です。
復職した後も不完全な状態のまま経過し、何年経っても発症前のレベルまで回復できない状態になります。
ある意味、入り口と出口が非常に重要であるというふうに捉えられ、個人的にはとても参考になりました。
特に発症直後の十分な休息というのは、自分も経験した通り非常に非常に大事です。
ここで無理を重ねてしまうと、本当に回復までの期間が長期に及ぶことになります。
是非とも頭の片隅に置いておき、いざという時には休息をとるという決断をできるだけ迅速に行うことが非常に重要だと思います。
本記事の内容は、「うつ病はこころの骨折です」を参考にしながらもほとんどが私自身の経験を踏まえた内容になっていますが、この本自体も非常に価値のあるものですので、うつ病がなかなか回復せずに悩んでいる方は是非一度読んでみることをお勧めします。