アモキサンは三環系と呼ばれる古いタイプの抗うつ剤です。
三環系の中では新しい部類に入るのですが、それでも現在主流のSSRI、SNRIに比べると古いタイプの抗うつ剤です。
かつてこのアモキサンを処方されたことがあります。
このアモキサンは非常に効果を感じた薬なのですが、結果的には不自然に意欲を上げてしまった結果、中止になるという結末になりました。
ここではこのアモキサンにより失敗した経験をご紹介したいと思います。
急性期にアモキサンを処方される
アモキサンはうつ病でいう急性期(最も症状の重く辛い時期)に処方されました。
当時は働けずに休養中で、なんとか状態を持ち上げようという意図でアモキサンが処方されました。
アモキサンを使ってもしばらくはほとんど寝たきりの状態が続いたのですが、しっかり休むにつれ少しずつ活動ができるようになってきました。
意欲とやる気が顕著に改善
活動ができるようになってくると、いろいろなことがしたくなってきます。
今振り返っても、まだ体調が不十分だったにも関わらず、意欲が大いに上がったのはアモキサンの影響が大きかったのではないかと思われます。
また、この時期はうつ病の初期の休養の重要性というのをあまり知らなかったため、しっかり休んで回復するのではなく、何かをすることによって回復させようとしました。
そのため、少しでも活動できそうと見るや否やいろいろな活動に勤しみました。
例えば、
などの活動です。
アモキサンの影響で意欲が上がっていたため、多少体調が悪くとも、体が動く限りにおいてはこのような活動を日々行っていました。
今思えば、軽い躁状態になっていたのではないかと思います。
3歩進んで3歩下がる
うつ病からの回復においては、まずはしっかりとエネルギーを溜めることが重要です。
これをしっかりやらずに無理に活動をしてしまうと、結局エネルギーを使い果たしてしまい、元の状態に戻ってしまいます。
当時の私は、まさにこのような状態に陥っていました。
とにかく意欲が上がっているので、昼サイクリングをして、夕方にジョギングをして、最後に水泳をしてと、普通の人から見てもちょっと活動しすぎなんじゃないの?というくらいに活動していました。
そしてある時にエネルギーを使い果たし、数日間寝込むようになります。
数日寝込むと、再びエネルギーが回復してきて活動できるようになります。
すると再び上記のような活動を行い、再びエネルギーを使い果たし、数日間寝込みます。
このような生活をしばらく続けていましたが、全く回復している実感が持てませんでした。
まさに3歩進んで3歩下がるというような状態で、最初の状態から進んでいるように思えないのです。
結局数か月過ぎてもこの状況が改善しなかったため、現在の治療方針ではうまくいかないと判断し、アモキサンは中止になりました。
アモキサンの離脱症状
アモキサンをやめるにあたっては、離脱症状が気になりました。
数か月間使用していたため、体がアモキサンを使っている状態に慣れてしまい、離脱症状が起こるのではないかと懸念したのです。
抗うつ剤には離脱症状はほとんどないとよくいわれるのですが、実際には様々な抗うつ剤で離脱症状が報告されています(特にSSRIのパキシルなどは有名ですね)。
医者に離脱症状の懸念を相談したところ、「アモキサンは大丈夫だよ」と軽く言われました。
そして、その言葉を信じ、アモキサンは減量などをせずに一気にやめたのですが、結論としては離脱症状は特に起こりませんでした。
むしろ副作用の不快な症状が無くなったことはプラスでした。
一方で、アモキサンをやめたことにより意欲はそれまでよりも顕著に衰えました。
この時アモキサンの意欲を上げる効果は強いということを身をもって実感しました。
アモキサンは使う時期を選ぶ抗うつ剤
このように私のアモキサンを使ったうつ病治療はうまくいきませんでした。
そして使ってみた経験から、アモキサンは使う時期を選ぶ抗うつ剤であると強く感じています。
アモキサンは既に述べたように意欲を上げる効果に優れた抗うつ剤です。
そのため、意欲を上げる必要のある時には効果を発揮すると思われますが、しっかり休むことが必要な時期には、意欲を上げて活動性を高めてしまうのは諸刃の剣として働いてしまう可能性が高いです。
具体的なアモキサンを使うべき時期、使うべきでない時期は以下の通りです。
アモキサンを使うべき時期
アモキサンを使うべき時期は、しっかり休んでエネルギーが溜まったにも関わらず、意欲が上がってこず、どうしてもやる気が出ないというような場合です。
例えば、
- うつ病の急性期においてしっかり休み、エネルギーが溜まったにも関わらず、意欲が上がらないので外に出られない
- 職場復帰に向けて準備しているものの、どうしても意欲がわかず復職の目途がたたない
このような場合に、意欲のスイッチを入れ、背中を後押ししてくれるような役割を期待してアモキサンを使うというのはとてもいいのではないかと思います。
アモキサンを使うべきではない時期
一方で、アモキサンを使うべきではない時期は、意欲を上げる必要のない時期です。
例えば、
- うつ病の発症直後のとにかく休むことが必要な時期
- エネルギーの蓄積よりも活動によるエネルギーの消耗が勝ってしまっている時期
このような時期にアモキサンを使用してしまうと、私の経験のように不自然に意欲が上がってしまい、休むべき時にしっかり休むことができず、結果として治療を長引かせてしまう危険性があります。
自分でも薬の知識を身に着けることの重要性
抗うつ剤というのは作用プロセスが複雑でそのためその効果の現れ方や有効性も個人個人により異なることも多いですが、やはり各抗うつ剤の特徴を捉え、適切な時期に適切な薬を使っていくということが重要ではないかと思います。
そういった意味で、私のように休息が必要な時期にアモキサンを処方した医者の判断は今でもなぜなのか理解できないでいます。
その医者がアモキサンが好きだったのか、過去の処方でうまくいくケースが多かったからなのか、はたまた私に合うように思えたからなのかわかりませんが、今振り返っても不思議でなりません。
当時は今ほど抗うつ剤の選択肢が多くなかったという事情もあるかと思いますが、それでも不本意にも?抗うつ剤の知識がそれなりについてしまった今となっては、あの処方は悪手だったなあとしばしば思い出します。
医者の処方は基本的には信用していますが、一方で信用しすぎることも危険だと思います。
今ではネットや本などで多くの情報を入手できますので、是非自身の使っている、もしくは使う予定のある薬については、自分でも最低限の知識を身に着けておくことをおすすめします。