【2019年版】よく使われている抗うつ薬ランキング

空と雲

どんな抗うつ薬がよく使われているのだろうか?

自分の使っている抗うつ薬はよく使われているものなのだろうか?

このような疑問に答えるため、抗うつ薬の使用状況に関するアンケート調査を行い、どの抗うつ剤がよく使われているかを調べてみました。

ここではこのアンケート調査の結果による、よく使われている抗うつ薬ランキングをご紹介します。

調査対象の抗うつ薬

調査対象とした抗うつ薬は以下の通りです。

なお、全ての抗うつ薬を対象とするのではなく、ある程度使われていると思われる抗うつ薬に絞ってアンケート調査を行っています。

三環系

四環系

SSRI

SNRI

NaSSA

全部で14種類の抗うつ薬が対象です。

よく使われている抗うつ薬ランキング

アンケート調査により判明した、よく使われている抗うつ薬ランキングは以下のようになります。

順位 抗うつ剤 得票率
1位 サインバルタ 21%
2位 レクサプロ 15%
3位 ジェイゾロフト 13%
4位 リフレックス、レメロン 12%
5位 パキシル 11%
6位 アモキサン 7%
7位 イフェクサー 6%
8位 テトラミド 4%
9位 トリプタノール 3%
10位 トレドミン 3%

ランキングへのコメント

1位:サインバルタ

サインバルタが堂々の1位です。

昨年はレクサプロに次ぐ2位でしたが、一昨年前同様1位に返り咲いています。

サインバルタは臨床現場での評判もよく、セロトニン、ノルアドレナリンの両者にしっかり効くマルチタスクな抗うつ薬です。

日本のみならず世界的にもとてもよく使われています。

SSRI登場以降、セロトニンへの働きかけが中心の抗うつ薬が多かったのですが、このサインバルタはノルアドレナリンにもしっかり働きかけ、意欲ややる気を改善させるという貴重な効果を持ちます。

SSRI、SNRIの中で、意欲ややる気を持ち上げる効果がある程度しっかりあるのはこのサインバルタとイフェクサーくらいではないでしょうか。

そして両者では効果と副作用のバランスからサインバルタの方が一般的には優れていると言われています。

日本での発売は2010年とまだ新しい部類に入る抗うつ薬ですが、既に定番中の定番となっています。

2位:レクサプロ

昨年1位のレクサプロが今年は2位となりました。

おそらくレクサプロの使用頻度が減ったというよりは、サインバルタの方がより使われたと解釈しています。

レクサプロは2011年に発売された、SSRIの中では最も新しい抗うつ薬です。

SSRIの中でも副作用の少なさに定評があり、また確かな抗うつ作用も持ち合わせているため、効果と副作用のバランスに優れています。

抗うつ薬の有効性と副作用を調べたMANGA Studyという研究では、レクサプロは有効性で2位、忍容性で1位となっており、総合的にはもっとも効果と副作用のバランスに優れた抗うつ薬となっています。

臨床の現場での評判も良く、発売直後からかなりよく使われてきているようです。

昨年より順位は落としていますが、トップレベルに使用されている抗うつ薬の1つと言えます。

現在では、うつ病と診断され、しっかり休むという方針を取る際には基本的にこのレクサプロが第一選択薬となっているようです(医師談)

3位:ジェイゾロフト

SSRIの代表的な薬の1つであるジェイゾロフトが3位となりました。

SSRIの中ではレクサプロに続く、2番目の順位です。

昨年は4位でしたが、今年は順位を1つ挙げました。

まあ4位のリフレックスとは僅差ですので、この辺りは誤差の範囲内かと思います。

このジェイゾロフトはSSRIの中では日本で3番目に発売された抗うつ薬です。

レクサプロのところで述べましたが、MANGA Studyという12種類の抗うつ薬の有効性と忍容性(副作用の大きさ)を調べた研究では、ジェイゾロフトは有効性が4位、忍容性は2位と高い評価を得ています。

つまり、レクサプロほどではありませんが、ジェイゾロフトも効果と副作用のバランスが優れた抗うつ薬ということになります。

ここ数年はレクサプロの後塵を拝していますが、引き続きよく使われている抗うつ薬と言えます。

4位:リフレックス、レメロン

レクサプロ、サインバルタとは一線を画すNaSSAというカテゴリーに属するリフレックス/レメロンが4位となりました。

昨年は3位でしたので、安定して上位に位置している抗うつ薬と言えます。

このNaSSAは、SSRI、SNRIとは作用プロセスが異なり、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害するのではなく、放出される量そのものを増やすというユニークな作用をします。

一方で副作用もユニークで、眠気や便秘、体重増加といったSSRI、SNRIとは異なる(場合によっては真逆の)副作用が出現します。

そのため、胃腸の不具合や食欲不振などの副作用が出現しやすく、SSRIやSNRIが使えないという人は、このリフレックス/レメロンと相性がいい可能性があります(私もこの部類に入ります)

また、上記のようにSSRI、SNRIとは作用プロセスが異なるため、特にNaSSAとSNRIを併用して、相乗効果を狙うことをカリフォルニアロケットといったりします。

具体的にはリフレックスとサインバルタ、リスレックスとイフェクサーなどの組み合わせが有名ですが、アンケート調査ではリフレックスとレクサプロという組み合わせで使っている方もいました。

このようにリフレックス/レメロンはユニークな特徴を持つ抗うつ薬ですので、今後も一定の割合で使われ続けていくのではないかと思います。

5位:パキシル

おそらくSSRIの中で最も有名な抗うつ薬ではないでしょうか。

SSRIの中でも抗うつ作用が強いことが特徴ですが、一方で副作用が出やすかったり、離脱症状が起こり易いというデメリットも存在する抗うつ薬です。

SSRIの中ではややハイリスク、ハイリターンの特徴を持つといったところでしょうか。

SSRIとしては日本では2番目に発売された抗うつ薬で、2000年に発売されています。

発売された当初は、それ以前に発売されたルボックス/デプロメールより優れた抗うつ作用があることから、よく使われたようです。

一方、ここ数年はより新しく、かつ副作用や離脱症状などのリスクの少ないレクサプロやジェイゾロフトに押され気味です。

ただし、昨年と変わらず5位をキープしていることからも、依然としてよく使われている抗うつ薬の1つと言えます。

なお、ここまでの1位から5位までで得票数の約3/4を占めます。

多くの方はこの5つのうちのどれか(もしくは複数)を使っているのではないでしょうか。

この上位5つはここ数年安定しているため、今後も画期的な新薬が登場しない限りは同じような傾向が続くのではないかと想像しています。

6位:アモキサン

最も古いカテゴリーである三環系の抗うつ薬アモキサンがこの順位に入ってきました。

三環系の抗うつ薬は確かな効果を持つ一方、重い副作用も持つため、現在では第一選択薬として使われる頻度はめっきり減ったと言われています。

しかしながら、現在主流であるSSRIやSNRIなどで効果が不十分な場合には、現在でも使われるケースがままあるようです。

アモキサンは特に意欲ややる気を持ち上げる効果に優れた抗うつ薬です。

そのため、ある程度エネルギーは溜まってきたものの、意欲ややる気がどうしても持ち上がってこない、というような方に処方されているケースが多いのではないかと想像します。

いずれにせよ、未だに三環系の抗うつ薬が使われるケースが結構あるということがこのアモキサンの順位から言えるかと思います。

7位: イフェクサー

日本では2015年に発売された新しい抗うつ薬ですが、世界的には1990年代から使われている歴史のある抗うつ薬です

サインバルタに次いで発売されたSNRIですが、世界的には既にイフェクサーよりサインバルタの方がよく使われていますので、今後日本で使われる頻度が増えるかどうかは未知数なところがあります。

昨年の6位から順位を1つ下げていますので、この辺りで定着しつつあると見ることもできます。

SNRIの中ではサインバルタの方が主流であり続けると思いますが、抗うつ薬には個人差がありますので、一定の割合でイフェクサーも使われ続けるのではないかと思います

8位:テトラミド

現在では最も使われていない系列である四環系抗うつ薬であるテトラミドが8位となりました。

正直驚きの結果です。

かつて数十年前にはそれなりに使われていた時期もあったようですが、新しい抗うつ薬の誕生とともに徐々に使用頻度が減り、今では化石に近い存在ともいえます。

その四環系がまさかここに入ってくるとは思いませんでした。

このテトラミドはリフレックスの原型ともなった抗うつ薬で、その化合式はとても類似しています。

副作用も似ていて、特にリフレックスの強烈な眠気はまさにテトラミドゆずりのものです。

この眠気を利用して、睡眠薬として処方されることもあるようです。

いずれにせよ、このテトラミドが8位に入ってきたことには驚きを感じえません。

9位: トリプタノール

現存する抗うつ薬の中で最強の抗うつ作用を持つと言われている抗うつ薬。

一方で副作用の重さも最強と言われており、まさにハイリスク、ハイリターンを地で行く、古典的な三環系の抗うつ薬。

その副作用の重さから、現在では処方される頻度は多くないようです。

一方で難治性のうつ病や他の抗うつ薬との相性が合わない場合には今でも処方されるケースがあるようです。

このトリプタノールが現在でも9位に入ってくるあたりに、うつ病治療の難しさを感じます。

10位:トレドミン

SNRIの中で最も早く日本で発売されたトレドミンがこの順位です。

SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方に働きかけ、心身を休みやすい状態にするとともに、意欲ややる気を上げるという特徴がありますが、このトレドミンはいかんせん効果が弱いです。

そのため、SNRIの中ではより効果がしっかりとしたサインバルタやイフェクサーの方が使われやすい傾向があります。

その結果、このような順位に落ち着いたと思われます。

ランキングへの感想

ランキングは、全体的には予想通りの結果でしたが、いくつか以外に思った点もあります。

まず、1位にサインバルタが返り咲いたこと。

昨年はレクサプロが1位でしたが、この順位がひっくり返ったのはすこし驚きでした。

まあ1つの順位差ですので誤差の範囲内かもしれませんが、薬物療法が休ませる方向から持ち上げる方向に少しシフトしたのかな?と思わせる結果でした。

そして6位のアモキサン。

こちらはSSRIが登場するまでは主力として使われていた抗うつ薬ですが、その後使用頻度はだいぶ減った印象がありました。

しかしながら、未だに6位というところに少し驚きを覚えています。

私も経験しましたが、三環系の抗うつ薬はいかんせん副作用が強く、初期の不快感が半端でなく、使い続けるのは困難になる場合も多いです。

そのような系統の薬がいまだにそれなりに使われているところにこの病気の難しさを感じます。

9位にトリプタノールが入っているという点についても同様の理由で驚かされました。

SSRIに関しては、数年前はジェイゾロフト、レクサプロ、パキシルがほとんど同率でしたが、近年はレクサプロが頭一つ抜けてきました。

この動きには、抗うつ薬の進歩を感じるところです。

抗不安薬のランキングではほとんど新しい薬が上位に入ることはないのですが、抗うつ薬に関しては少しづつ進歩しているなと実感できる結果となっています。

抗うつ薬は数年に1度のペースで新薬が出てきていますので、今後もよりよい抗うつ薬の登場を期待しています。

なお、睡眠薬、抗不安薬(精神安定剤)についても同様の調査を行っていますので、ご興味がありましたら以下の記事をどうぞ。

参考記事:よく使われている睡眠薬ランキング

参考記事:よく使われている抗不安薬(精神安定剤)ランキング

どのカテゴリーの抗うつ剤がよく使われているか

今回の調査では、合わせてどのカテゴリーの抗うつ剤がよく使われているかも調べましたので番外編としてご紹介します。

カテゴリー 得票率
SSRI 41%
SNRI 30%
NaSSA 12%
三環系 13%
四環系 5%

抗うつ薬を使っている方のうち、実に7割程度がSSRI、SNRIを使っています。
これを見ると、やはりSSRI、SNRIが主流として使われていることがよくわかります。

一方で、古いカテゴリーの三環系、四環系も2割弱と未だにそれなりに使われていることがわかります

抗うつ薬には人によって相性がありますので、SSRIやSNRI、NaSSAが合わなかったり、効果が十分でないような場合には、三環系の抗うつ薬の出番はまだまだあるのではないかと思われます

いずれにせよ、治療の柔軟性を高めるという意味では、多くのカテゴリーの抗うつ薬が存在することはよいことではないかと思います。

過去のランキング

ご参考までに、過去のランキングもご紹介します。

こちらを見ると、どのようにランキングが変わってきているのかがなんとなくわかります。

2018年版のランキング

順位 抗うつ剤 得票率
1位 レクサプロ 17%
2位 サインバルタ 17%
3位 リフレックス、レメロン 12%
4位 ジェイゾロフト 10%
5位 パキシル 10%
6位 イフェクサー 7%
7位 アモキサン 6%
8位 ルボックス、デプロメール 6%
9位 トレドミン 5%
10位 トリプタノール 3%

2017年版のランキング

順位 抗うつ剤 得票率
1位 サインバルタ 20%
2位 ジェイゾロフト 14%
3位 レクサプロ 13%
4位 パキシル 13%
5位 リフレックス、レメロン 9%
6位 アモキサン 9%
7位 ルボックス、デプロメール 7%
8位 イフェクサー 5%
9位 トリプタノール 4%
10位 アナフラニール 3%

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