睡眠薬は、その名の通りなかなか寝付けなかったり、途中で起きてしまったりと、睡眠に支障をきたした時に処方される薬です。
この睡眠薬が処方されたときに、
「どんな睡眠薬がよく使われているのだろうか?」
「自分の使っている睡眠薬はよく使われているものなのだろうか?」
と疑問に思うことがあります。
そこで、このような疑問に答えるために、睡眠薬の使用状況に関するにアンケート調査を行い、どの睡眠薬がよく使われているかを調べてみました。
ここではこのアンケート調査の結果による、よく使われている睡眠薬ランキングをご紹介します。
調査対象の睡眠薬
調査対象とした睡眠薬は以下の通りです。
作用時間のカテゴリー別に掲載しています。
なお、全ての睡眠薬を対象とするのではなく、ある程度使われていると思われる睡眠薬に絞ってアンケート調査を行っています。
超短時間型(作用時間約5時間以内)
短時間型(作用時間5時間~10時間程度)
中時間型(作用時間10時間~24時間程度)
- ベンザリン、ネルボン
- ユーロジン
- エリミン
- ベルソムラ
長時間型(作用時間24時間以上)
- ドラール
- ダルメート、ベジノール
- ソメリン
対象は全部で16種類です。
なお、デパスは睡眠薬としてもよく使われている薬ですが、抗不安薬のカテゴリーに入れていますのでここでは対象外としています。
よく使われている睡眠薬ランキング
アンケート調査により判明した、よく使われている睡眠薬ランキングは以下のようになります。
順位 | 抗うつ剤 | 得票率 |
1位 | マイスリー | 17% |
2位 | レンドルミン | 14% |
3位 | ロヒプノール、サイレース | 12% |
4位 | ルネスタ | 11% |
5位 | ハルシオン | 10% |
6位 | ベルソムラ | 9% |
7位 | ロゼレム | 6% |
8位 | ユーロジン | 5% |
9位 | エバミール、ロラメット | 5% |
10位 | アモバン | 4% |
ランキングへのコメント
1位:マイスリー
非常によく使われているマイスリーが堂々の1位です。
マイスリーは非ベンゾジアゼピン系というカテゴリーに属する、
効果の出現の速さと作用時間の短さから主に入眠障害に使われる薬
副作用も従来のベンゾジアゼピン系の睡眠薬に比べると少ないため
精神科のみならず、内科でも「なかなか眠れない」
個人的には作用時間が短すぎてあまり好きではない睡眠薬なのです
2位:レンドルミン
レンドルミンはマイスリーと並び、とてもポピュラーな睡眠薬で、
マイスリーよりは作用時間が長く、
かくいう私も最初に内科で処方された睡眠薬はこのレンドルミンで
このレンドルミンという薬の効果は賛否両論で、
この辺りは薬との相性と、あと薬の耐性(
とにもかくにも特に初心者によく処方されやすく、
3位:ロヒプノール、サイレース
ロヒプノール/サイレースが3位となりました。
ロヒプノールは決してソフトな睡眠薬ではなく、
作用時間がある程度長いため、
ただし、軽い睡眠障害の場合には、
このようにヘビー級の睡眠薬であるにも関わらず3位になるところ
いきなりこの薬を処方されるのではなく、
その睡眠作用の強さから、
なお、アメリカでは危険薬物に指定されており、
4位:ルネスタ
ルネスタは2012年に発売された比較的新しい睡眠薬です。
非ベンゾジアゼピン系に属し、
また、このルネスタはアモバン(後述)の改良版で、副作用と(
個人的には入眠障害に使う睡眠薬としては評価の高い薬なのですが
まだ新しい部類の睡眠薬であり、
5位:ハルシオン
かつては一世を風靡し、
80年代~90年代にはとてもよく処方され、
一方で、乱用が問題になったり、
現在ではハルシオンと類似の効果を持ちながら、
確かに超短時間型の中では睡眠作用が強いため、
年々徐々にランキングが下がることを予想していましたが、
6位:ベルソムラ
2014年に発売された新しい睡眠薬ベルソムラが6位に入りまし
昨年より2つ順位を落としています。
昨年は順位を上げてきていましたが(4位)、
ベルソムラはオキシレン受容体拮抗薬と呼ばれる、
また、
そのため、本当に効くのかどうか、
この薬にはひょっとするとベンゾジアゼピン系を上回るポテンシャ
7位:ロゼレム
ロゼレムは2010年に発売された比較的新しい睡眠薬です。
メラトニン受容体作動薬という他の睡眠薬とは異なる作用プロセス
ざっくり言ってしまうと、
ただ、実際の効果としてはとてもマイルドで、
軽い睡眠障害や副作用の気になるお年寄りに比較的使われやすい印
また、個人的には時差ぼけの解消に重宝しています。
7位という順位から、よく使われている睡眠薬とは言えませんが、
8位:ユーロジン
唯一中~
そもそも睡眠薬というのはその名の通り睡眠用に使われるものなの
そういった意味で純粋に睡眠薬として使われているかどうかは疑問
9位:エバミール、ロラメット
この辺りに来ると、
エバミール/ロラメットはベンゾジアゼピン系に属し、
個人的にはレンドルミンと似たような効果を持つ睡眠薬という印象
これといった特徴のない睡眠薬のためなのか、
10位:アモバン
かつてはハルシオンのライバルとも目された睡眠薬です。
ハルシオンと同等の効果を持ち、
現在ではより副作用と苦味を低減した改良版であるルネスタ(
昨年より順位も下げてきています。
ランキングに対する感想
全般的に大きな驚きはありませんでしたが、やはりロヒプノール/
お世辞にも優しい薬とは言えないのですが、
2014年に発売されたベルソムラですが、
臨床の現場での評価はよいようなので、
医学・薬学というのは日々進歩していますので、
そういう意味で、
今後も1年に一回くらいのペースで同じような調査を行っていきた
なお、抗不安薬(精神安定剤)と抗うつ剤についても同様の調査をしていますので、ご参考までにどうぞ。
参考記事:よく使われている抗不安薬ランキング
参考記事:よく使われている抗うつ剤ランキング
どの系統の睡眠薬が使われているか
追加で、どの系統の睡眠薬が使われているかについても調査を行いましたのでご紹介します。
対象の系統は以下の通りです。
- ベンゾジアゼピン系
- 非ベンゾジアゼピン系
- メラトニン系・オキシレン系
- バルビツール酸系
よく使われている睡眠薬の系統ランキング
よく使われている睡眠薬の系統のランキングは以下のようになります。
カテゴリー | 得票率 |
ベンゾジアゼピン系 | 65% |
非ベンゾジアゼピン系 | 26% |
メラトニン・オキシレン系 | 6% |
バルビツール酸系 | 3% |
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系が主流
やはり、これを見ると、圧倒的にベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が多いです。
この2つで全体の約9割を占めています。
メラトニン系とオキシレン系はまだそれほど多くない
新しいタイプのメラトニン系とオキシレン系の睡眠薬は、合わせて6%程度となりました。
ちなみに、メラトニン系の睡眠薬は「ロゼレム」、オキシレン系の睡眠薬は「ベルソムラ」になります。
近年ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の副作用がしばしば問題視されている中で、徐々にシェアを伸ばしてきている印象のある系統ですが、今回の調査ではまだそれほど多くはないという結果になりました。
おそらく将来的にはもっとシェアを伸ばしていく系統なのではないかと思います。
未だにバルビツール酸系が使われている
個人的に驚きだったのは、3%と割合は多くないものの、未だにバルビツール酸系の睡眠薬が使われているということです。
バルビツール酸系の睡眠薬はその依存性の強さや、広範囲にわたる脳の機能へ影響を与えることから近年ではほとんど処方されることはないと言われていますが、実際にはわずかではありますが現在でも処方されている方がいるようです。
やはり効果という点では主流のベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系よりも上を行くため、重い睡眠障害を患っている方には必要ということなのでしょうか。
ちなみに私自身もイソミタールというバルビツール酸系の睡眠薬が処方されたことがありますが、その際は依存性への恐怖から使うことができませんでした・・・。
総括すると、近年新しい系統の睡眠薬は出てきているものの、未だに主力はベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬という結果になっています。
過去のランキング
ご参考までに、過去のランキングを以下にご紹介します。
2018年
順位 | 睡眠薬 | 得票率 |
1位 | マイスリー | 17% |
2位 | ロヒプノール、サイレース | 15% |
3位 | レンドルミン | 13% |
4位 | ベルソムラ | 12% |
5位 | ルネスタ | 9% |
6位 | ハルシオン | 9% |
7位 | ロゼレム | 5% |
8位 | アモバン | 4% |
9位 | ドラール | 3% |
10位 | エバミール、ロラメット | 3% |
2017年
順位 | 睡眠薬 | 得票率 |
1位 | ロヒプノール、サイレース | 21% |
2位 | マイスリー | 18% |
3位 | レンドルミン | 17% |
4位 | ベルソムラ | 10% |
5位 | ハルシオン | 8% |
6位 | ルネスタ | 8% |
7位 | ロゼレム | 4% |
8位 | エバミール、ロラメット | 3% |
9位 | アモバン | 3% |
10位 | ドラール | 3% |
ランキングの変動について
こうしてみると、毎年順位はそこそこ入れ替わっていますが、薬の顔触れはほとんど同じであることがわかります。
要するに睡眠薬は使われる薬がほぼ固定されていることです。
もちろんルネスタやベルソムラといった新しい薬が発売になった時には顔触れの変動はあるのですが、なかなか新薬は出てこないため、せいぜい数年に1度くらいのイベントです。
それでも使われている薬のトレンドをとらえることにある程度意味があるとおもっていますので、気が向く限り調査は続けていこうと思います。