働く人のうつ病が増えていると言われています。
メンタルヘルスへの関心の高まりから、企業に対しメンタルヘルスのチェックのような施策を義務付ける動きもありますが、どの程度の効果があるのかは未知数の部分があります。
そもそもサラリーマンがうつ病になる原因は、大きく分けて過労によるものと人間関係によるものに分けられます。
過労によるうつ病
過労だけが問題ではない
過労によるうつ病は一見とても分かりやすいです。
働き過ぎにより、心身にプレッシャーがかかりすぎ、ある程度のレベルを超えたところでうつ病を発症するというのが一般的なパターンです。
しかし、実際には物事はそんなに単純ではありません。
経験上、過労だけによるうつ病は少ないのではないかと思います。
むしろ、過労に加え、その仕事に対する周りのサポートがなかったり、孤立して仕事をしていたり、愚痴をこぼせる相手がいなかったりといった過労によるストレスを和らげるバッファーがなかったことがうつ病の発症に大きく関わっているように思います。
もちろん過度な労働はそれ自体でうつ病の原因になり得ますが、こうしたサポートの有無がうつ病防止にとても重要な役割を果たすのではないかと思います。
昨今話題になった電通での過労自殺問題も、過労だけの問題ではなく、本人に対する周りのサポート体制など他にも問題点が多々あったように思います。
過労プラス環境要因が原因になる
要するに、過労はダイレクトにうつ病の原因になり得ますが、実際に過労でうつ病になるかどうかは周りのサポートも含めた環境要因も大きく関わるというのが所感です。
そういった意味で、月間の残業時間が何時間以上であったら労災とみなすという、数字しか見ないで判断するのはナンセンスだと思います。
残業時間に加え、それに対する周りのサポートや働く環境なども加味して判断すべきでないかと思います。
過労の場合は仕事の内容も大きく影響
一口に過労といっても、好きで長時間働いている場合と無理やり長時間働かされている場合とでは全く意味合いが異なります。
当然ですが好きで長時間働いている場合には、うつ病のリスクはそれほど高くありません(しかし、好きでやっていても過度にやりすぎるとうつ病になる場合もあります)
一方で好きでもない仕事を無理やりやらされている場合は、当然のことながらうつ病のリスクは高まります。
仮に同じだけの時間働いたとしても、前者と後者では心にかかる負担は天と地ほどの差があります(体にかかる負担はそれほど差はないかもしれませんが)
そして、うつ病は基本的に心にかかる負担によって発症してしまうものなので、無理やりやらされている過労がどれほど危険なものかは想像するまでもありません。
人間関係によるうつ病
人間関係に起因するうつ病は、単純な過労よりも多いのではないかと思います。
ここでいう人間関係とは、セクハラやパワハラといった社会的に許されないハラスメントから、そこまでいかなくても職場の人間関係がうまくいかない、チームのメンバーとうまくやっていけないといった、日常的によくありそうな人間関係までも含んでいます。
セクハラやパワハラ
セクハラやパワハラは精神的に大きなダメージを与え、到底許されない行為ですが、残念ながらセクハラやパワハラを起因としたうつ病というのはよく聞く話です。
当事者になってみないとわからないかもしれませんが、セクハラやパワハラは一発で人をうつ病に追いやるほどの破壊力を持った行為です。
個人的には現在のハラスメントに対するペナルティというのはあまりにも軽すぎると思います。
加害者は注意を受けるか、異動するか程度のペナルティで済まされることが多いですが(そもそも何のお咎めもなしという場合も多い)、被害者にとっては人生を変えてしまうほどの大きな影響を受けます。
会社というところは風波を立てることを良しとしないカルチャーがあるため、軽い処罰で終わることが多いですが、個人的には刑事罰に匹敵するほどのペナルティを与えるべきではないかと思っています。
職場の人間関係
そもそも人間のストレスの大部分は、人間関係に起因するといわれています。
そのため、人間関係を原因としたうつ病はとてもありがちなものともいえます。
ハラスメントまではいかないものの、周りとの関係がうまくいかない、上司からどうも嫌われている、といったことも精神的にダメージを与えますので、十分にうつ病の原因となり得ます。
こうした場合、徐々にストレスが蓄積していき、それでも(人間関係で)無理を重ねているとある日を境にうつ病を発症するということがあります。
人間関係というのは多くの人が抱える悩みです。
この人間関係のバランスをどうとっていくかが、うつ病を防ぐ上ではとても重要になるのではないかと思います。
過労と人間関係の相互作用が一番危険
過労と人間関係がうつ病の原因として多いという話をしてきましたが、最も危険なのはこの両者の相互作用です。
つまり過剰な労働を重ねたうえで、人間関係もうまくいっていないと、とたんに心身を壊すリスクが高まります。
こういった場合に考えられる対処は、まず労働時間を減らすように上司に相談する、周りとのコミュニケーションを日頃からとっておくということです。
しかしながら、もしこのような改善策が難しい場合には、その環境から逃げることも重要です。
辛い時には逃げてもいい
そもそもうつ病になりやすい人はまじめな人が多いので、大変だからといってすぐに逃げようとはしない人が多いのですが、逃げることは悪いことではありません。
むしろ人生全体を考えれば、適切な逃げ方を身に着けるということは、心地よく生きていくうえでとても大事なことです。
正々堂々と立ち向かい、責任を持って物事に取り組むということは大変美しく素晴らしいことですが、それだけでは人生の壁を乗り越えられないことがあるのもまた事実です。
そしてそのような場面に出くわした場合には、逃げるという選択肢を常に持っておくことが大切です。
逃げるという選択肢を常にもっておけば、自分の現状に対してより客観的になれます。
そしていざというときには実際に逃げてしまってもよいのです。
健康でさえいられれば、人生というのはなんとでもなるものです。
最後に
サラリーマンがうつ病に陥る要因は過労と人間関係に分けられると思いますが、やはりより重要なのは人間関係の方ではないかと思います。
人間関係が良好であれば、ある程度の過労は耐えられると思いますし、一方で人間関係に問題を抱えていると、仕事自体の負荷はそれほどでなくてもうつ病に陥る危険性がそれなりにあるのではないかと思います。
人間関係が良好でない場合、良好になるように努力するというのも一つの方法ではありますが、嫌いな人はやはり嫌いといったことも人間である以上しょうがない部分もあります。
このような場合には、ストレスを溜めて耐え忍ぶのではなく、自分にとってより居心地のよい場所を探すというのも1つの方法ではないかと思います。
現状に立ち向かうのではなく、現状から逃げるというのは聞こえはよくないかもしれませんが、自分の人生を考える上ではとても大切なことです。
そもそも人は皆自分の人生を選ぶ権利があります。
石の上にも三年といった言葉もありますが、そんなこと気にせず逃げるべき時には全速力で逃げてしまいましょう。
人生というのは懐が深いものです。
一度や二度逃げたところでどうやっても生きていくことはできるはずです。