テトラミドは四環系というカテゴリーに属する抗うつ剤です。
四環系抗うつ剤は、三環系の次に登場したカテゴリーの抗うつ剤で、古くから使われているタイプになります。
ここではこのテトラミドの効果・副作用と特徴をご紹介します。
テトラミドの概要
テトラミドは日本では1983年に発売された抗うつ剤です。
その歴史は古く、30年以上使われている抗うつ剤になります。
現在では使われる頻度が減ったようですが、その強烈な睡眠作用から、抗うつ剤としてではなく、睡眠薬として処方されることもあります。
以下にテトラミドの基本情報をご紹介します。
抗うつ剤としてのカテゴリー
- 四環系抗うつ剤
四環系は、抗うつ剤としては三環系に次ぐ古いカテゴリーとなります。
今となっては古いタイプのカテゴリーになっています。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約18時間
- 血中濃度最高点到達時間:約2時間
薬の効果は服用後約2時間で最大になり、約18時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。
ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。
あくまで参考程度に見ておくとよいと思います。
効果が現れるまで2週間以上かかる
なお、一般的に抗うつ剤は服用してから効果が現れるまでに2週間以上かかるといわれています。
この2週間という期間は、その期間が過ぎたら効果をすぐに実感できるということではなく、2週間過ぎたぐらいから徐々に効果が表れ始めるという意味です。
実際に十分な効果が表れるまでには月単位の時間がかかると言われています。
抗うつ剤の使い初めは、効果が出てくるまで辛抱強く待つ必要があります。
適応疾患
- うつ病・うつ状態
テトラミドの効果
抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。
抗うつ剤の5つのカテゴリー
抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。
- 三環系:効果は強いが副作用も強い
- 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
- SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
- SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
- NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある
カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。
テトラミドは四環系に属し、三環系に次ぐ古いカテゴリーの抗うつ剤となります。
三環系に比べると、副作用は低減されているものの、効果もやや弱いという特徴を持ちます。
四環系の中でのテトラミドの強さ
更に四環系の中には、以下のような抗うつ剤が存在します。
- ルジオミール
- テトラミド
四環系の抗うつ剤は少なく、上記の2つになります。
このルジオミールとテトラミドでは作用のプロセスが違うので単純比較は難しいですが、効果としてはテトラミドの方が弱いと言われています。
テトラミドの効果の特徴
抗うつ剤には、セロトニン及びノルアドレナリンを増やす効果がありますが、テトラミドに関してはノルアドレナリンを増やす効果に優れた抗うつ剤です。
そのため、意欲ややる気といった部分を上げるために使用される抗うつ剤と言えます。
しかしながら、テトラミドを使うと意欲がすぐに上がるかというとそうでもなく、まずは強烈な鎮静作用が現れ、しばらく眠くぼーっとした状態が続きます。
また、テトラミドの意欲ややる気を上げる効果はあまり強くなく、この薬でやる気が上がったという話はほとんど聞いたことがありません。
そういった意味で、抗うつ作用という意味ではマイルドな抗うつ剤と言えるかと思います。
独自の作用プロセス
テトラミドは効果を発揮するプロセスに独自性があります。
通常の抗うつ剤ではセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害することでセロトニン、ノルアドレナリンの濃度を増やすという特徴があります。
一方で、テトラミドは再取り込みを阻害するのではなく、ノルアドレナリンの放出量そのものを増やすというプロセスでノルアドレナリンの濃度を増やします。
この特徴的な作用の仕方は、より新しい抗うつ剤であるリフレックス(レメロン)に引き継がれています。
参考記事:リフレックスの効果と副作用
せん妄にも効果が見られる
テトラミド独自の特徴として、せん妄にも効果があるという点が挙げられます。
うつ病がある程度重症化するとせん妄が起こる場合があります。
このような場合に、テトラミドは効果を発揮すると言われています。
なぜなのかはよくわかりませんが、経験的にテトラミドはせん妄に効くことがあるようです。
テトラミドの副作用
四環系の副作用の特徴
テトラミドをはじめとした四環系抗うつ剤は、三環系に比べると効果は劣るものの、副作用も低減されているという特徴があります。
しかし、低減されているとはいってもやはりそれなりの副作用は出現します。
主な副作用としては、抗コリン作用と抗ヒスタミン作用によるもの2つに分類することができます。
抗コリン作用
抗コリン作用の代表的なものとしては、
- 口渇
- 便秘
- 目のかすみ
- 尿閉
- 眼圧上昇
抗ヒスタミン作用
抗ヒスタミン作用としては、
- 眠気
- 体重増加
などがあります。
その他の副作用
また、その他にも
- 手が震える
- 立ちくらみ
といった副作用もあります。
現在の基準では副作用は多い
要するに三環系の抗うつ剤に比べると副作用は低減されていますが、それでもなおかなりの副作用が存在します。
またその強さの程度も個人差はありますがかなり不快なレベルまで感じることがあります。
四環系の抗うつ剤は現在主流のSSRIやSNRIに比べて強い抗うつ作用を持つわけではなく、一方で副作用は多く出現するという難点から、現在では処方される頻度は減ってきています。
なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。
それでもなお多くの副作用が残るというのが四環系の抗うつ剤の特徴です。
四環系の中でのテトラミドの副作用の特徴
上記のように副作用は大きく分けると抗コリン作用と抗ヒスタミン作用に分けられますが、テトラミドに関しては抗コリン作用が低減し、抗ヒスタミン作用が出現しやすいという特徴があります。
特に強烈な眠気を催すという特徴があり、知らずにつかってしまうとびっくりしてしまうほどです。
この眠気という副作用はうまく使えば睡眠薬代わりになるため、必ずしも副作用とはいえない面もあります。
また、睡眠の質に関しても、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬のように深部睡眠を阻害してしまうのではなく、深部睡眠を促す効果があるため、よく眠れるというメリットがあります。
このような特徴により、抗うつ剤としてではなく、睡眠薬として使用されることもある薬になります。
テトラミドの改良版がリフレックス
リフレックスとの類似性
テトラミドはリフレックス(レメロン)の原型となった抗うつ剤です。
両者の構造式は驚くほど似ていて、末尾を2か所ほど替えただけの違いとなっています。
であれば効果や副作用は似ているのかといえば、そうとも言え、そうでないとも言えます。
まず両者で似ている部分は、
- 強烈な眠気の副作用
- 体重増加の副作用
- セロトニン/ノルアドレナリンの再取り込みを阻害するのではなく、放出量そのものを増やす
といった点です。
リフレックスと似ていない特徴
一方で、似ていない部分は
- テトラミドはノルアドレナリンのみに作用するのに対し、リフレックスはセロトニン、ノルアドレナリン両方に作用する
- リフレックスの方が抗うつ作用が強い
といったところでしょうか。
現在ではリフレックスが主流
総合的に見ると、効果と副作用のバランスではリフレックスの方が優れているため、現在ではテトラミドよりリフレックスの方が処方される頻度は多いです。
では今となってはテトラミドの出番はないかというとそうではないようです。
まず、抗うつ作用がそれほど強くないことから軽症のうつ病やお年寄りに使用されたり、ノルアドレナリンにピンポイントに作用させるために使用されたり、上記のように睡眠の改善も期待して使用されたりといったことはあるようです。
特に睡眠に関しては深部睡眠を促進させることから、
- とても気持ちよく眠れた
- 朝の寝起きのつらさが軽減された
といった話も聞くことがあります。
いずれにせよ、抗うつ効果そのものを狙うのではなく、睡眠効果を狙ったり、軽症のうつ病に処方されたりという、やや横道に逸れた使われ方をする抗うつ剤という特徴があるように思います。
テトラミドの特徴まとめ
以上、テトラミドの特徴をまとめると以下のようになります。
- 四環系の抗うつ剤に属し、効果はマイルドで副作用は眠気が中心
- セロトニンには作用せず、ノルアドレナリンのみに働きかける
- 眠気の副作用を逆手にとって睡眠薬として使用されることも多い
- せん妄にも効果があるとされる
- リフレックスの原点となった抗うつ剤。現在ではリフレックスの方が主力として使われることが多い