「うつ病は心の風邪です」というフレーズがあります。
このフレーズに私はとても違和感を感じます。
実際のうつ病という病気は、風邪とは比較にならないほど苦しいものです。
風邪という表現により誰にでもなりうるというメッセージにはなりますが、実際の症状に照らして、風邪に例えるのは適切ではないと思います。
うつ病は風邪とは比較にならないほど苦しい
「うつ病は心の風邪です」というフレーズは、製薬会社がうつ病の認知度を高めるために広めた言葉だと思います。
うつ病を広く世間に知らしめるという点においては、大きな成果をあげたフレーズだと思いますが、一方でうつ病と風邪を比較するという点において違和感を感じます。
風邪とは比較にならない辛さ
実際のうつ病の苦しさというのは風邪とは比較にならないほど苦しいものです。
風邪と違って、うつ病は通常長きにわたる治療が必要です。
また風邪というのは外部のウイルスによってもたらされるれるものですが、うつ病というのは 脳の内部の異常によってもたらされるもののため、そもそもの病気としての構造が違います。
「心の骨折」の方がまだましな表現
もしうつ病を例えるのであれば、「心の骨折」の方がより適切なのではないかと思います。
骨折というのは自分の内部にある骨が折れ、それを修復ためするために患部を長期にわたって固定させる(休息を与える) という点において、うつ病と類似点が見られるからです。
骨折と比べても比較にならない辛さ
しかしもし私がうつ病と骨折のどちらかを選べと言われれば、間違いなく骨折の方を選びます。
10本の骨折と言われても骨折の方を選びます。
全身骨折で全治半年と言われても、骨折の方を選びます。
そのくらい、うつ病で味わう苦しみというのは、辛いものなのです。
まさにこの世の終わりとも思えるほどの絶望的な苦しみが続きます。
うつ病を他の病気に例えること自体に無理がある
こうして考えてみると、骨折というのはうつ病の例えとしては風邪よりも適切なように思えますが、実際の辛さを比較する上では全く勝負にならないことがわかります。
おそらく骨折でなく、例えば初期のガンであったり、肺炎であったりしても、どちらかを選べと言われれば迷わずうつ病でない方を選びます。
治る希望が持ちにくいのがうつ病の辛さの1つ
うつ病の辛さの1つは、治るということが想像しにくいことです。
一般的な内科的もしくは外科的な病気であれば、多くの場合概ねこのくらいの目安で完治するであろうということがわかるのですが、うつ病にはそういったガイドラインがありません。
そのため、一体いつになったら治るのだろうか、本当に治る日がやってくるのだろうかという疑心暗鬼に取らわれてしっまうことが、より一層治療を難しくしてしまいます。
やはり物理的な異変を扱う内科や外科と、脳の異変を扱う精神科ではこの辺りの考えが根本的に違うと感じます。
いつかうつ病をはじめとした精神疾患も内科や外科と同じように手術などで対処できるようになればいいのですが、いかんせん脳という臓器は構造が複雑なため、相当の医学の進歩がないと望めそうもありません。
そういう意味では、うつ病を他の病気で例えるということ自体がナンセンスなのかもしれません。