ハルシオンは今でこそ処方頻度は少なくなった印象がありますが、かつては一世を風靡するほどメジャーな睡眠薬でした。
ここではこのハルシオンの概要と効果・副作用、睡眠作用の強さ、そしてかつての栄枯盛衰の歴史などをご紹介します。
ハルシオンの概要
ハルシオンは日本では1983年に発売された睡眠薬です。
発売から30年以上経っていますが、いまだに処方されている睡眠薬です。
以下にハルシオンの基本情報をご紹介します。
睡眠薬としての系統
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬というのは現在主流として使われている睡眠薬の系統となります。安全性の高さがその特徴の1つとなっています。
脳内の不安や催眠に関わるGABA受容体に作用し、睡眠を促すというのが大まかな作用プロセスになります。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約3時間
- 血中濃度最高点到達時間:約1時間
薬の効果は服用後約1時間で最大になり、約3時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になりますが、実際にはそれよりやや短く感じることが多いです。
ハルシオンに関しては、実際には2~3時間程度効果を実感します。
適応疾患
- 不眠症
- 麻酔前投薬
ハルシオンの効果
おくすり110番には効果は以下のように記載されています。
- 睡眠薬として広く使用されている系統です。比較的安全性が高く、効き目もよいので、不眠症の治療には、まずこの系統が使われます。
- 同類薬のなかでは、持続時間が超短時間型です。寝つきの悪いときや一時的な不眠に適します。翌朝の眠気や不快感も少ないです。
比較的安全性が高く、効き目がよいという記載になっています。
また、持続時間が短いという特徴が記載されています。
もう少し効果について踏み込んで説明します。
ハルシオンをはじめとした睡眠薬は、「作用時間の長さ」と「作用の強さ」という2つの軸で特徴が表されます。
睡眠薬の作用時間の分類
まず、睡眠薬の作用時間の4つの分類を見てみます。
- 超短時間型:作用時間が概ね6時間以内
- 短時間型:作用時間が6時間から12時間程度
- 中時間型:作用時間が12時間から24時間程度
- 長時間型:作用時間が24時間以上
どの作用時間の睡眠薬を使うかは、睡眠障害の種類によって異なります。
睡眠障害には以下の3つのタイプがあります。
- 入眠障害:なかなか寝付けない
- 中途覚醒:途中で起きてしまう
- 早朝覚醒:早朝に起きてしまう
睡眠薬の作用時間と、睡眠障害の種類の関係は概ね以下のようになります。
- 超短時間型:入眠障害
- 短時間型:入眠障害及び中途覚醒
- 中時間型:中途覚醒及び早朝覚醒
- 長時間型:早朝覚醒
ハルシオンは半減期約3時間の超短時間作用型の睡眠薬のため、主に入眠障害に使われる薬となります。
ですので、途中で起きてしまう、早朝覚醒がひどいといった症状には効果が薄く、あくまで寝つきが悪いという時に使用する睡眠薬になります。
ハルシオンの強さ
ハルシオンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中の同系統の薬でも作用は強い方です。
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同系統(同じ程度の作用時間)の睡眠薬には以下のものがあります。
これらの睡眠薬の中でも、強さが一歩抜きんでているのがハルシオンになります。
これらの中で最もよく使われているのはマイスリーですが、マイスリーでは眠れないけどハルシオンだと寝付けるという話もしばしば聞きます。
このように、睡眠作用が他の睡眠薬よりも強いことが、現在でもハルシオンが使われ続けている理由の1つとなっています。
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ただし、効果は強ければいいのかというと、必ずしもそうではありません。
効果と副作用は表裏一体の関係があり、一般的に効果が強い薬程、副作用も強くなる傾向があります。
後述のように、ハルシオンには注意すべき副作用が存在します。
ハルシオンの副作用
ハルシオンをはじめとしたベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、基本的に安全性が高いと言われています。
そのため、医師の指示通りの服用をしていれば重篤な副作用が発生することはあまりありません。
お薬110番には副作用は以下のように記載されています。
比較的安全性の高いお薬です。
正しく服用するかぎり、重い副作用はまずありません。
ただ、人によっては、翌朝に眠気やふらつき、けん怠感や脱力感などが残ることがあります。
高齢の人は、転倒にも注意してください。
比較的安全性が高く、正しく使用する限り基本的に重い副作用はないという記載となっています。
しかしながら、もちろん副作用が全くないわけではありません。
もう少し詳しく説明すると、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には主に以下の5つの副作用があります。
- 耐性
- 依存性
- 眠気の持ち越し
- 健忘
- ふらつき
「耐性」とは、その薬を使い続けることによりその薬に体が慣れてしまい、同じ効果を得るためにより多くの量を使用しなければならない状態になることをいいます。
「依存性」とはその薬が体内に入ってくることが当たり前になってしまい、その薬なしではいられなくなってしまう状態になってしまうことをいいます。
「眠気の持ち越し」は睡眠作用が翌日まで残ってしまうことをいいます。
「健忘」は睡眠薬を服用後、自分のしたことを忘れてしまうことをいいます。
「ふらつき」は睡眠薬の睡眠作用や筋弛緩作用(筋肉を和らげる作用)がふらつきにつながり、転倒などが起こりやすくなります。
ハルシオンに関しては、半減期が短いため、「眠気の持ち越し」はあまり見られません。
一方で、睡眠作用が強いため、「健忘」や「ふらつき」には注意する必要があります。
服用後にすぐに寝てしまえば問題ないですが、何か作業をしたり、途中で起きてトイレに行くときなどは注意が必要です。
「耐性・依存性」についてはハルシオンに関しては特に注意が必要です。
作用時間が短く、効果の強い薬といのは依存しやすい傾向があるためです。
使うと眠れるけどやめようとすると眠れなくなるというのはよく聞く話です。
使用の際には、効果と副作用を天秤にかけ、それでもメリットの方が上回るときに限り使用するべきです。
なお、一般的に睡眠薬は依存しやすいという難点があるため、1か月程度の短期での使用が奨励されています
ハルシオンの栄枯盛衰
ハルシオンはかつて一世を風靡した睡眠薬です。
睡眠薬といえばハルシオン、ハルシオンといえば睡眠薬というように精神疾患を患っている人のみならず一般の人にも広く知れ渡った睡眠薬でした。
そのため睡眠障害でもないのに多くの人が手軽に使用したり、また極端な例では昏睡強盗に使用されたりとダーティな印象を残してしまった残念な側面もある薬です(もちろんこの印象は薬の本質的な効果とは無関係ですが)。
このようにハルシオンという薬は乱用が問題視され、その後徐々に衰退していきました。
また、マイスリーという類似の睡眠薬が2000年に発売されたのも衰退に拍車をかけました。
マイスリーはハルシオンと効果は似ているものの、より安全性が高いという特徴があります。
そのため、徐々にハルシオンはマイスリーへとその勢力を奪われていき、ハルシオンは下火の存在となっていきました。
しかしながら、ハルシオンはその作用の切れのよさから一定のファンが存在しており、現在でも処方され続けています。
ハルシオンとマイスリーの比較
ハルシオンとマイスリーは作用時間が概ね同じで、とても似たタイプの睡眠薬です。
実際に使ってみた感覚も概ね同じような感じです。
ハルシオンの方が作用は強いと言われていますが、重い睡眠障害でなければ、マイスリーでも十分眠れるというのが個人的な感想です。
両者とも飲むと速やかに眠気が現れ2~3時間程度で効果がなくなります。
大きな違いとしていわれているのは副作用です。
当然両者とも副作用は存在しますが、やはり新しいタイプのマイスリーの方がより安全性は高く副作用が少ないという特徴があります。
例えば健忘(薬を飲んだ後に自分が行ったことを忘れてしまう )や依存性といった副作用はマイスリーの方が低減されていると言われています。
ただ、実際には精神科の薬には相性があり、マイスリーよりハルシオンの方がよく眠れるといった人もいるかと思いますので、最終的には個々人に合った薬を使っていくことが大切ではないかと思います。