アナフラニールは副作用は強いが、セロトニンへの効果に優れる

癒しの空と緑

アナフラニールは三環系というカテゴリーに属する抗うつ剤です。

三環系とは、化学構造中に環状構造が3つあることから由来している名前で、抗うつ剤のカテゴリーとしては最古のものになります。

つまり、アナフラニールは抗うつ剤の中でも古い部類の薬になります。

ここでは、このアナフラニールの効果・副作用と特徴をご紹介します。

アナフラニールの概要

アナフラニールは日本では1973年に発売された抗うつ剤です。

発売から数十年経っており、今となっては使われる頻度が減った薬です。

しかしながら、その効果には他の抗うつ剤とは違った特徴があるため、未だに処方されるケースもあるようです。

以下にアナフラニールの基本情報をご紹介します。

抗うつ剤としてのカテゴリー

  • 三環系抗うつ剤

三環系は、抗うつ剤としては最古のカテゴリーとなります。

かつて1990年代くらいまでは、この三環系抗うつ剤がうつ病治療の主力として使われていました。

作用時間

  • 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約20時間
  • 血中濃度最高点到達時間:約4時間

薬の効果は服用後約4時間で最大になり、約20時間で血中の濃度が半分になります。

半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。

ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。

あくまで参考程度に見ておくとよいと思います。

効果が出るまでには時間がかかる

なお、一般的に抗うつ剤は服用してから効果が現れるまでに2週間以上かかるといわれています。

この2週間という期間は、その期間が過ぎたら効果をすぐに実感できるということではなく、2週間過ぎたぐらいから徐々に効果が表れ始めるという意味です。

実際に十分な効果が表れるまでには月単位の時間がかかると言われています。

そのため、使い始めの頃は、効果が出るまでじっと副作用に耐えて待つことになります。

適応疾患

  • うつ病・うつ状態
  • 遺尿症
  • ナルコレプシーに伴う情動脱力発作

基本的にはうつ病に使われる薬ですが、その多様な作用(副作用)から遺尿症(睡眠中などに無意識に放尿してしまう)やナルコレプシー(突然起こる強い眠気の発作)などにも適応があります。

アナフラニールの効果

抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。

抗うつ剤の5つのカテゴリー

抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。

  • 三環系:効果は強いが副作用も強い
  • 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
  • SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
  • SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
  • NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある

カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。

アナフラニールは三環系に属し、古いカテゴリーの抗うつ剤となります。

効果は強いものの、副作用も強いという特徴を持つことになります。

三環系の中でのアナフラニールの強さ

更に三環系の中には、以下のような抗うつ剤が存在します。

三環系の抗うつ剤は更に第一世代と第二世代の2つの分けることができます。

第二世代の抗うつ剤は、効果は第一世代と同等で副作用が低減しているという特徴があります。

アナフラニールは三環系の中で第一世代に属し、確かな効果を持つ一方、副作用も多いという特徴があります。

アナフラニールの効果の特徴

三環系の抗うつ剤には、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やすという効果があります。

アナフラニールに関しては、セロトニンを増やす効果に優れており、主に不安を和らげたり、心を落ち着かせたりして休みやすい状態にする効果が強い抗うつ剤となっています。

三環系の抗うつ剤にはどちらかというとノルアドレナリンを増やし、意欲ややる気といった部分を改善する効果のある薬が多いのですが、アナフラニールはこのように他の三環系とは少し違った効果を持つという特徴があります。

かつて三環系の抗うつ剤しかなかった時代には、主にセロトニンに作用させるには、このアナフラニールを使うしかなかったことになります。

強迫性障害に有効

アナフラニールのもう一つの特徴として、強迫性障害に有効であると言われています。

セロトニンを優位に増やすという特徴からも、不安や焦燥感に相性がいいのは想像がつきますが、特に強迫性障害に対し有効性が高いため、しばしば用いられているようです。

この辺りはアナフラニールがSSRI的な要素を持っていることにも関係していると思われます(詳細は後述)

アナフラニールの副作用

三環系の副作用の特徴

アナフラニールをはじめとした三環系抗うつ剤は、効果が強い反面、副作用も強いという難点があります。

三環系は古いタイプの抗うつ剤なので、セロトニンとノルアドレナリンのみならず様々な受容体に作用してしまうため、多くの副作用が存在します。

主な副作用としては、抗コリン作用と抗ヒスタミン作用によるもの2つに分類することができます。

抗コリン作用

抗コリン作用の代表的なものとしては、

  • 口渇
  • 便秘
  • 目のかすみ
  • 尿閉
  • 眼圧上昇

があります。

抗ヒスタミン作用

抗ヒスタミン作用としては、

  • 眠気
  • 体重増加

などがあります。

その他の作用

また、その他にも

  • 手が震える
  • 立ちくらみ

といった副作用もあります。

とにかく副作用が多い

要するに、三環系の抗うつ剤には多くの副作用が存在し、またその強さの程度も個人差はありますがかなり不快なレベルまで感じることがあります。

そのため、副作用に耐えられずに脱落してしまう人も多くいます。

三環系の抗うつ剤は現在主流のSSRIやSNRIに比べても強い抗うつ作用を持つ薬が多いのですが、このような副作用が多いという難点から現在では処方される頻度が減ってきています。

なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。

それでもなお多くの副作用が残るというのが三環系の抗うつ剤の特徴です。

三環系の中でのアナフラニールの副作用の特徴

アナフラニールは三環系の中でも第一世代に属するため、三環系の中でも副作用は多い方です。

上記に挙げたような副作用はかなりの確率で起こると考えた方がよいです。

今ではおそらくあまりないと思いますが、もしこのアナフラニールを始めの抗うつ剤として処方された場合、あまりの副作用の大きさに驚くのではないかと思います。

私の場合は、この副作用と付き合っていくのかと考えただけで絶望的な気持ちになりました。

それくらい三環系の抗うつ剤の副作用というのは重いです。

三環系の抗うつ剤は効果は確かなのですが、副作用の強さも確かなものがあるため、使用する際には多くの副作用が現れるという前提で使う必要があります。

アナフラニールはトフラニールの改良版

アナフラニールは元をたどると世界最古の抗うつ剤であるトフラニールの改良版です。

化学構造的にはトフラニールの末尾に塩素を加えただけなのですが、これだけでノルアドレナリン優位なトフラニールからセロトニン優位のアナフラニールに変わるという点はとても興味深いところです。

この辺りの関係性はリフレックスとテトラミドにも似たものを感じます(両者も末尾を少しいじっただけの違いです)

もし昔の三環系しかない時代だったら

もし私が今倒れ、仮に三環系の抗うつ剤しか使えない場合には、このアナフラニールを選ぶと思います。

というのは、うつ病で最も症状の重い急性期においてはとにかく休むということが重要で、このアナフラニールのセロトニンを優位に増やすという特徴は心身共に休みやすい状態にするという点においてとても優れているからです。

急性期にはノルアドレナリンよりセロトニンが大事

仮にエネルギーが不十分な状態で他のノルアドレナリンを優位にする抗うつ剤を使った場合には、意欲ややる気を無理やり持ち上げてしまいます。

そのため、少し元気になったら活動し、そしてエネルギーを消耗し、再びエネルギーを溜めるというスパイラルに陥ってしまう可能性があります。

これはまさに三歩進んで三歩下がるという状態で、このような状態が続くとうつ病は治らないのではないかと思ってしまいます(実際にそう思っていた時期もありました)

つまり、うつ病が最悪の状態から抜け出すためにはセロトニン優位の抗うつ剤を使う必要があり、そういう意味で三環系の中ではアナフラニールが一番ふさわしいのではないかというのが個人的な所感です。

今でこそより副作用の少ないSSRIやSNRIなどが登場したため処方される頻度は少なくなりましたが、それでもやはり強力な抗うつ作用を持つため、未だに処方されるケースはあるようです。

参考記事:よく使われている抗うつ剤ランキング

アナフラニールはSSRIの原点

また、現在主流のSSRIはこのアナフラニールが開発のきっかけになったと言われています。

かつてはノルアドレナリンが重要と考えられていた

かつては、うつ病を治すには意欲ややる気といった部分に作用するノルアドレナリンが重要なのではないかと思われていました。

しかしながら、このアナフラニールのセロトニンに優位に働く特徴により、うつ病が改善する症例を見て、ノルアドレナリンではなくセロトニンの方がより重要ではないかと視点が変わっていったようです。

そしてセロトニンに作用しながら、副作用を抑えて開発されたものが現在のSSRIとなります。

そういった意味で、アナフラニールは三環系の抗うつ剤の中ではSSRI的とも言えます。

もちろんノルアドレナリンにも作用したり、現れる副作用の多さや大きさといった点では大いに違いはありますが。

アナフラニールの特徴まとめ

以上、アナフラニールの特徴をまとめると以下のようになります。

  • 三環系の抗うつ剤で作用は強いが副作用も強い
  • セロトニンを優位に増やすという特徴がある
  • 強迫性障害にも有効
  • SSRIの原点ともいえる抗うつ剤
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