トレドミンはSNRIというカテゴリーに属する抗うつ剤です。
SNRIとは、SSRIと並び現在抗うつ剤の主流として使われているカテゴリーになります。
ここではこのトレドミンの効果・副作用と特徴をご紹介します。
トレドミンの概要
トレドミンは日本では2000年に発売された抗うつ剤です。SNRIというカテゴリーでは初めて発売された抗うつ剤になります。
以下にトレドミンの基本情報をご紹介します。
抗うつ剤としてのカテゴリー
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SNRIとは、SSRIと並び現在主流として使われている抗うつ剤のカテゴリーの1つになります。
SSRIはセロトニンの再取り込みを阻害することで脳内のセロトニン濃度を高め、抗うつ作用を発揮しますが、SNRIは同時にノルアドレナリンの再取り込みも阻害することにより、意欲ややる気といった部分にも働きかける特徴があります。
作用時間
- 半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間):約8時間
- 血中濃度最高点到達時間:約2.5時間
薬の効果は服用後約2.5時間で最大になり、約8時間で血中の濃度が半分になります。
半減期がおおよそ薬が効果を発揮する時間の目安になります。
ただし、抗うつ剤の場合、効果が出るまでに時間差があり、実際の効果の継続時間も必ずしも半減期とは一致しません。
あくまで参考程度に見ておくとよいと思います。
適応疾患
- うつ病・うつ状態
トレドミンの効果
抗うつ剤の効果を考える際には、まずその抗うつ剤がどのカテゴリーに属するかが重要になります。
抗うつ剤の5つのカテゴリー
抗うつ剤には5つのカテゴリーが存在します。それぞれの特徴は以下になります。
- 三環系:効果は強いが副作用も強い
- 四環系:三環系に比べ副作用は低減されているが、効果もマイルド
- SSRI:三環系と同等の強さを持ちながら副作用は低減されている
- SNRI:SSRIに更に意欲ややる気といった効果が加わる
- NaSSA:確かな効果がある一方で、副作用にはくせがある
カテゴリーとしては三環系が最も古く、下に行くほど新しいカテゴリーとなります。
トレドミンはSNRIに属し、三環系などの古い抗うつ剤に比べると副作用が少なく、またSSRIとの比較では意欲ややる気を持ち上げるという効果が加わるという特徴があります。
SNRIの中でのトレドミンの強さ
更にSNRIの中には、以下の3つの抗うつ剤が存在します。
- トレドミン
- サインバルタ
- イフェクサー
これら3つの中では、トレドミンの強さは弱い部類になります。
サインバルタやイフェクサーは確かな抗うつ作用を持つ薬として知られていますが、トレドミンの効果はこれらの薬に比べると劣ります。
SNRIの中ではマイルドな効果の抗うつ剤というのがトレドミンの強さの特徴となります。
トレドミンの副作用
SNRIの副作用の特徴
トレドミンをはじめとしたSNRIは、古いタイプの抗うつ剤(三環系など)に比べると副作用は低減されています。
しかしながら、消化器系の症状を中心に依然として副作用は存在します。
また、副作用の種類は概ねSSRIと類似しています。
具体的には主に以下のような副作用があります。
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 性機能障害
- 眠気(不眠)
吐き気や食欲不振、下痢はSSRIやSNRIの代表的な副作用で、多かれ少なかれこれらのを使うと発生する副作用となります。
SSRIやSNRIはセロトニンの再取り込みを阻害することでセロトニン濃度を高めますが、セロトニンは胃腸にも存在し、そこにも作用してしまうためこれらの副作用が現れます。
これらの副作用に対処するために、胃腸薬が同時に処方されることもよくあります。
性機能障害もSSRIやSNRIではよく見られる副作用です。
眠気に関しては個人差が大きく、眠くなるという人もいれば逆に眠れなくなるという人もいて、個人差があります。
なお、抗うつ剤の副作用全般にいえることですが、使用当初は大きく副作用を感じますが、時間とともに副作用は軽減されてくることが多いです。
SNRIの中でのトレドミンの副作用の特徴
トレドミンはSNRIの中では副作用は少ないと言われています。
しかしながら、吐き気や下痢といった胃腸系の副作用はよく見られるようです。
効果はマイルドな一方、副作用も少ないというのがトレドミンの特徴となります。
MANGA Studyによるトレドミンの評価
抗うつ剤の有効性と忍容性を調査したMANGA Studyという研究があります。
これによると、各抗うつ剤の有効性は以下のようになります。
(注)海外の研究であるため、日本未発売の薬も含まれる。また、古い抗うつ剤は対象外
有効性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レメロン/リフレックス | 24.4 |
②レクサプロ | 23.7 |
③イフェクサー | 22.3 |
④ジェイゾロフト | 20.3 |
⑤セレクサ | 3.4 |
⑥トレドミン | 2.7 |
⑦ウエルブトリン | 2.0 |
⑧サインバルタ | 0.9 |
⑨デプロメール/ルボックス | 0.7 |
⑩パキシル | 0.1 |
⑪プロザック | 0.0 |
⑫Davedax | 0.0 |
また、忍容性(副作用の軽さ、薬を継続使用できるかどうか)は以下のようになります。
忍容性の指標によるランキング | 最も良い治療で ある可能性(%) |
①レクサプロ | 27.6 |
②ジェイゾロフト | 21.3 |
③ウエルブトリン | 19.3 |
④セレクサ | 18.7 |
⑤トレドミン | 7.1 |
⑥レメロン/リフレックス | 4.4 |
⑦プロザック | 3.4 |
⑧イフェクサー | 0.9 |
⑨サインバルタ | 0.7 |
⑩デプロメール/ルボックス | 0.4 |
⑪パキシル | 0.2 |
⑫Davedax | 0.1 |
(データはkyupinの日記より取得、一部記載を変更)
このMANGA Studyによると、トレドミンの有効性は6位、忍容性は5位となっており、可もなく不可もなく、普通な位置づけの抗うつ剤となっています。
ただ、このMANGA Studyは臨床の現場とはちょっと感触が違うという話も聞きますので、参考程度に見ておくとよいと思います。
トレドミンの特徴
冒頭でも述べましたが、トレドミンは日本で初めて発売されたSNRIに属する抗うつ剤になります。
SSRIやSNRIが登場する前は、三環系の抗うつ剤が主として使われていましたが、これらは効果は確かな反面、副作用も多いという難点がありました。
そして2000年頃になってようやく登場した、副作用を抑えた抗うつ剤がSSRIやSNRIであり、SSRIではルボックス(デプロメール)、SNRIではトレドミンでした。
SSRIはセロトニンのみに作用するため、セロトニンとノルアドレナリンの両方に(ものによってはドーパミンにも)作用する三環系の抗うつ剤と比べると意欲ややる気といった面の改善で劣るのではないかといった懸念があったのですが、この懸念を払しょくするかと思われたのがSNRIであるトレドミンでした。
このように発売当初は大きな期待のあった抗うつ剤だったのですが、使っているうちにどうも効果があまり強くないようだということが判明し、徐々に処方される頻度が減っていったという少し残念な歴史があります。
また、パキシルやジェイゾロフトのような確かな抗うつ作用を持つSSRIが登場したこともトレドミンがあまり処方されなくなる要因となりました。
現在では、サインバルタやイフェクサーといったSNRIでも確かな抗うつ作用を持つ抗うつ剤が存在しますので、ますます処方される頻度は少なくなっているようです。
また、効果がマイルドな反面、副作用も少ないという特徴があると述べましたが、それでもやはり副作用はそれなりに感じます。
特にSNRIの代表的な吐き気や下痢といった副作用はやはり胃腸の弱い人には問題になります。
私自身はかなり昔にトレドミンを使用しましたが、気持ち悪さと食欲の低下が顕著であったため、使用を断念した経緯があります。
やはりSSRIやSNRIは胃腸の弱い人には相性がよくないのだと思います。
ここまではかなりトレドミンに対して否定的なことを書いてしまいましたが、決して存在価値のない薬ではありません。
そもそも抗うつ剤というのは効果や副作用の出方の個人差が大きいため、多くの選択肢があることはとても大切なことだと思います。
また、トレドミンのマイルドに効き、副作用もそれほど大きくないという特徴は、うまくいけば軽いうつ状態の人などにはフィットする可能性を秘めているとも言えます。
加えて、サインバルタやイフェクサーに比べると気持ちを持ち上げる効果が弱いという点は、逆に言えば躁転しにくいというメリットと捉えることもできます。
以上、トレドミンの特徴をまとめると以下のようになります。
- SNRIというカテゴリーに属し、セロトニンとノルアドレナリンの両方に働きかける
- 抗うつ剤としては、効果はマイルドで副作用もマイルド
- 副作用はマイルドでも胃腸系の副作用はそれなりにあるため、胃腸の弱い人には向かない可能性がある
- 重いうつ状態ではなく軽いうつ状態の人に向く可能性が高い